217.アキラ、酢物を欲す。

 「さぁ~て、梅、採るぞ!! 」


皆、ポカーンとしている。


「え、いや、近くに梅の木あったんよ。梅! 梅だよ、梅! 」


ミユが、呟く。


「主、梅ってなんですか?」


えぇ・・・、そこから始めるの? そう思ってしまう。詳しく話を聞くと、どうも梅というものを、彼女らは知らないようだ。


まさか、梅を知らないとは思わなかった。なんて説明したら良いのだろうか、う~んと頭を悩ます。


「なんというか、超すっぱい木の実なんだね。元の世界では、それを食べたりしてたんだ。」


抽象的だが、間違った説明ではない。と自画自賛していると、皆が、元の世界というワードに食い付く。


「アキラさんが、食べていた梅というもの、私も食べてみたいです!! 」


そうテラが目を輝かせる。皆も未知の食べ物の梅に、興味深々なご様子。そうして、朝食を食べてすぐに梅を採りに行くこととなる。


 「それでは、張りきっていきましょう。」


その掛け声と共に、皆を先ほどの梅の木の所に案内する。そうして、家から南の方へと少し歩いて、到着する。


獣人であるテラは、漂ってくる酸っぱい匂いを嗅いだようで、酸っぱい顔をしている。可哀想なので、持っていた布を貸してあげる。


それを顔に巻きつける。その様子は、可愛い強盗みたいだ。


「ああ、アキラさんの香りがします。し、幸せです・・・。ハァーー・・・クンカクンカ。」


そう言って、テラの顔がほころぶ。嗚呼、テラは匂いフェチなのねと、一瞬で理解する。自分の匂いはわからないのだが、僕もテラの匂いは好きだ。


そして、梅の木の場所まで来ると、梅の木君を紹介する。


「なんか、普通の木ですね。」


ミユはそう言い、


「もっと珍しいものかと思ったけど、普通ね。」


イリスはそう答える。あまりにも、散々な言われように思わず、梅の木君、強く生きて! と思ってしまう。


気を取り直し、今回の収穫の方法を話す。まぁ、方法と言っても、僕が木を揺さぶって、落ちた梅の実を拾うだけなのだが。


そうして、木を揺さぶると


『ポトポト』


と、梅の実が落ちていく。辺りに、少し酸っぱい匂いが漂ってくる。それを彼女らと共に、拾っていく。


「こんな酸っぱい匂いのするものが、アキラ様は好きなのですか? 不思議です。」


そうアルテシアが呟く。まぁ、元の世界でももずく好きだったし、けっこう酢の物系が好きなのかもと考えながら、もずく最近食いたいなと思うアキラなのであった。

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