203.アキラ、謎にぶつかる。
書物を漁っていて、わかったことがある。ひとつは、200年ほど、前まではこの世界にも魔王という者が居たらしい。
しかし、その魔王が滅ぼした途端、魔王という共通の敵がいなくなったため、国々が争い合う乱世の時代に到来したと書いてある。
平和な時代で、本当によかったと心の底から思うが、その戦いの影響で、乱世の時代より前の記録が、ほとんどなくなってしまった様なのだ。
わかっているのは、魔と人はずっと争い合っていたということ。それに時々、異邦人らしき伝承が、出てきたりする程度であった。
その伝承も、多種多様で全員、魔王を倒しに行くところまでは似ているのだが、その道中で、死んだり、行方不明になったり、はたまた味方に殺されたりと、けっこうバットなエンディングを迎えている。
「ハハッ・・・他人事には思えない。」
と自分に重ねてしまう。本当に精霊さんが、有能で助かったと思いつつも、文献を探していくとあることに気付く。
乱世の時代になった途端、異邦人に関する事柄がぷつりと出なくなる。これは、何か因果関係があるのではと推測する。
しかし、別のことも考えられる。ひとつは、皆、異邦人に構っている場合ではなくなったか。しかし、魔王の時にも重宝されていた異邦人が、乱世の時代になって、急に必要とされないのは、おかしい。
次に考えられるのは、人間に殺される確率が上がり、伝承になる前に殺されているという可能性だ。これは比較的、信憑性も高い。
のんきに異世界に迷い込んで、浮かれている人間がどんどん死んでいったと考えられるが、それでも一人ぐらいは、伝承に残されるようなものでもある。
最後に思いつくのは、なんらかの影響で、異邦人が来る数が、極端に減ったという可能性だ。
推測をそのまま言い換えただけにすぎないが、これならば、伝承に残らないほど減った説明に理由としては、合点が付く。
では、その影響とは何なのかという理由は、依然として不明である。あの裂け目は、なんらかの現象で、それがあまり頻発しなくなったということかと考える。
例えば、火山のマグマが冷えたとかだろうか。しかし、自分という存在が、それを否定する。一過性のものではないとしたら、一体何があったのだろうか。
数百年周期の何かが訪れている前兆か?何かの数が極端に減った?神という存在のきまぐれか、はたまた、魔王の復活か。
いくつも考えられるが、どれも根拠がないため説得力にかけるものばかりであった。
それでも、わかったことがある。200年前に何が起きたか突き止めること。そして、ヒト型らしき骨格が、この世界とどういう関係なのかを解き明かさねばならないということだ。
そのためにも、まずは、この書庫の書物をすべて読む必要があると理解する僕なのであった。
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