141.アキラ、圧倒される。

 僕は、馬車に揺られながら外の景色を見ていた。巡礼者が途切れることなく続く、景色に少し恐怖を感じながらも、物珍しい景色に心を奪われていた。




その列の続く先に見える荘厳な城のような建物。装飾が施されて今まで見てきた城の中で、一番きれいだと思わせてくれる。




「あれが、シラ教の総本山、シュラ城です。シュラ城のなんと煌びやかなこt・・・」




そうアルテシアが教えてくれる。その説明からなんとも、強そうな名前だと思いながら、その煌びやかな様相から目が離せずにいた。




僕と同じように巡礼者も歩いては、その景色を茫然と見ている。それほどに、圧倒的な財力がつぎ込まれた宗教、それがシラ教だと思い知らせる。




アルテシアが少し拗ねたように私の腕に抱きつく。




「もうアキラ様、私より城の方がお好きですか。」




説明を途中から聞いていないことに、気付いたようで頬を膨らませながら、こちらを見つめる。




「ごめんごめん、あまりのすごさにきれいさに驚いちゃった。でも、アルテシアの方がずっときれいだよ。」




自分でも、なんとキザなセリフを言ったのだと驚く。どうやら、あまりの敵の強大さにどこかで、心が浮足立っているようだ。




そんな心の変化を感じとったのか。精霊さんが、




「宿主、落ち着いてください。場の雰囲気にのみ込まれては駄目ですよ。」




と忠告してくれる。




精霊さんの言う通りだ。いきなり、頬を両手で叩き気をしっかりと持ち直す。そうだ、冷静を失ったら終わりだ。そう思い直す。




僕の気持ちを知ってか、馬車は歩みを早くするのであった。




 夕日に照らされて、外の景色が変わってくる。そして、シュラ城の城下町に入っていく。そして、大きめな屋敷に馬車が止まる。




どうやら、アルテシアの国のジルド皇国の大使館のような屋敷だ。そして、今日の宿である。馬車を降り、中に入っていく。




出迎えたのは、従者らしき人たちであった。僕はアルテシアの後ろをついていく。アルテシアは表情ひとつ変えず、凛としている。




さすがは、皇女そう思わずにはいられなかった。そして、部屋に案内される。大きめの部屋だ、その部屋のイスに腰掛ける。すると、




アルテシアは従者に何かを告げる。




その者は少し驚いた顔をしながら、すぐに




「了解しました。」




と言って足早に退室する。アルテシアが、




「ウグリナスに近しい者との面会を取りつけますわ。アキラ様はゆっくりしていらしてください。」




そう言って、旅で疲れているにも関わらず、表情ひとつ変えずに僕の頼みを聞いてくれるのであった。

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