137.アキラ、旅行する。

 皆の多種多様な宗教観に触れ、やっぱ異世界だなと感じつつも、本題のアリなんとかにどう近づくかを考えていた。




「アリクバートンなんとかって、シカ教のナンバー2なんでしょ。敵とかいないの?」




よくある質問をしてみる。すると、アルテシアは知らないという顔をするが、イリスが少し小声で僕に話しかける。




「実はね、ウグリナっていう枢機卿が敵対してるって噂なのよ。」




ほぉー、やっぱりどこの世界でも、こういう対立ってのは絶えませんなぁ・・・という感想が出ながらも話を聞く。




「今のところ、シナ教の次期教皇はアリクバートンかウグリナで揉めているのよ。今のところウグリナが劣勢で陣営も揉めているらしいの。」




僕は閃く。




「そこに取り入って、アクリバートンに近づくってのは、どう?」




一同、驚愕の顔をするが、一体誰がそれをするのかという顔をする。アルテシアがしょうがないですね、と言った口調で、




「では、私の人脈を使って、アキラ様をウグリナ陣営に紹介します。皆さんは結社のこともあるので、警備が信頼できるこの城内に留まっていてください。」




そして、アルテシアは僕の方見て、




「さぁ、アキラ様、新婚旅行と洒落こみましょう。」




と言ってくるのであった。




 次の日、僕とアルテシアは支度を整えて、馬車で港に向かっていた。傷は段々と癒えてはきているが、顔にはまだ火傷の痕がまだ残っている。だから、仮面をつけて顔を隠している。まぁ、結社の一件があったので、この方が安全と言えば安全なのだ。




「アキラ様、まだ傷は痛みますか?」




と心配そうにアルテシアが聞いてくる。




「大丈夫だよ、もう痛みはないし。精霊さんからも火傷の傷は残らないだろうって言われたから全然平気だよ。」




そう言うとアルテシアは納得してくる。ただ、距離が近い。対面席なのに、なぜか隣に座ってきたのであった。




もうさっきからドキドキしてしっぱなしである。時折、馬車が揺れる時があるのだが、その際にアルテシアは僕に寄りかかってくる。




当のアルテシアはなんだか楽しそうである。まぁ、初めての二人旅であるからはしゃいでいるのであろう。




僕はそんなことより、今から船に乗ることに若干の恐怖を感じていた。前回も船には乗ったものの、常に陸地が見えていたが、今回は海のど真ん中を突っ切るわけで、もし何かあれば助からないという恐怖が全身を緊張させていた。




今回の作戦の言い出しっぺは僕であるが、まさか船に乗ることになるとは、思ってもみなかった。最初から前途多難な旅であった。

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