123.アキラ、奇襲する。

 メルトラが遊猟している近くまで来る。




奴の嫌な雰囲気が辺りに立ち込むことにより、奴が近くにいることが嫌でも実感する。見晴らしの良い丘で、メルトラが遊猟を終えた頃を待ち構える。




細心の注意を払い、矢に火薬入りの入れ物を巻き付けていく。導火線は縄を代用する。




その時は、刻一刻とやってくる。ハンターセンスが徐々に危険を察知しはじめる。額に汗が滲んでくる。あの時の感覚がまた襲ってきて、手が震え始める。その時、イリスが僕の手を握り、




「大丈夫、あなたなら出来るわ。だって、私が出来るって信じているから。」




僕をそう諭す。その言葉を聞いた瞬間、自然と震えが収まっていく。そして、頭を支配していた恐怖がなくなり、冷静さを取り戻す。今度こそそう自分に言い聞かせる。




 そして、メルトラがやってくる。僕は矢を構え確実に狙える射程範囲内まで待つ。メルトラは遊猟に満足したのか笑みを浮かべながら馬を歩かせる。




そのうち、矢の間合いまで入ってくる、ハンターセンスが今だと直感する!!その瞬間、縄に電流を流して発火させる。メルトラの利き腕に狙いを定め矢を放つ。




 矢は一陣の風の如くかけぬける。そして、火薬に着火するとさらに速度をあげていく。まさにそれは紅の閃光の如き様であった。




メルトラも矢が自分目掛けて飛んでくることに気付くがその時にはもう為す術もなく利き腕を射られる。




「ウグゥ」




矢はメルトラの利き腕を抉り貫通する。その勢いにより体勢を崩し、馬から転げ落ちる。従者がそれに気付き、周りを囲う。




カルラさんが手を挙げて、奇襲の合図を出す。皆が一斉にメルトラ一行に襲いかかる。自分も矢を放ち、加勢する。奇襲は成功しメルトラの従者が次々に討たれる。そして、残るは、メルトラだけになる。




 その男はなぜこのようなことになったのか理解しているような顔をしていた。




「ふっ・・・お前が噂の異邦人か。大した奴だ。この俺が弓兵ごときに後れを取るとは不覚であった。」




そして、何かを察したのか、




「どうやら、イベラの奴はしくじったようだな。あいつに任したのが私の運の尽きだったか・・・。」




不吉な笑みを浮かべながら、自分の失敗を愚痴る。そして、僕の顔を見つめながら、




「本当に殺るつもりなら、やれたはずであろう。そうしなかったと言うことは、結社の情報を聞き出すために俺を生かしたのであろうな。お前は俺との死合に勝ったのだ。ひとつ答えを教えてやる。」




そう言いながら、突き刺さった矢を引き抜きながら語り始めるのであった。

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