90.アキラ、偏差射撃。

 少し休憩がてら、遠くの方を見ていると動く物体を確認する。




イーグルアイでよぉ~く確認してみると、うさぎ君を確認する。すぐに家に戻り、弓矢を手にする。今日はウサギ狩りじゃ!!と意気込む。




なんたって久しぶりの狩りなので、少しテンションが高くなる。逸る気持ちを抑え、遠くの方にいるウサギへと近づいていく。




久しぶりに狩りをすることに、懐かしさを覚えつつも王都への旅でどれほど成長したのか試すのにいい機会だと考える。




ウサギはまだこちらには気付いておらず、水を飲んだり、草を食べて警戒心はゼロの様子である。




気持ちはまさに、狩人である。風が吹き抜けていく、それを感じながら、ウサギの風上に立たないように注意しながら進む。




音を立てないように、慎重に慎重に近づいていく。焦る気持ちが湧きたつが、スキル【平常心】で理性がそれを抑え込んでくれる。




情けないタイミングで発現したスキル君だが、なかなか狩りでは優秀に働いてくれる。おかげでかなり近づくことに成功する。




 弓を構えて、矢を取りだす。ウサギが殺気に気付いたのか、耳を逆立てて辺りを警戒する。しかし、もう遅い狙いを定め、動かぬ的に向かって電流を流しこんだ矢を放つ。




閃光の如く、ウサギの頭部を貫く。身体をヒクつかせながら、段々と動かなくなる。すると、カサカサと逃げる足音がする。その音のする方向を見ると、もう一匹ウサギが逃げていくのが見える。




そのウサギに向かって矢を構える。そのまま狙っても命中はしない、故に相手の走る方向を予測して撃つ必要がある。ウサギは一直線に走りながら逃げていく。




どんどんと距離を離されていることに焦りはあるが、その気持ちを抑えて、平常心で狙いを定める。そして、放つ。




偏差射撃で、ウサギ一頭分先に撃ったのだが、当たったのは、腰部分であった。ウサギの走るスピードがガタっと落ちる。僕は身体が勝手に動き、ダッシュで走っていた。




そして、追いつきナイフで首を切り落とす。首を下に向け、血抜きをする。そして、もう一匹も同じように首を切り落とし血抜きをする。




血抜きし終わった死体を二羽持ち、テラの家へと戻っていくのであった。




 家の庭で解体し始める。家にいたイリスにも手伝ってもらう。なんたって、冷凍スキルは鮮度を保つためには、必要だからである。この短時間で二羽仕留めたことに、




「おお、すごいわ。アキラ!!」




素直に驚いていた様子で、僕が解体している様子を眺めている。




皮を剥いで腹部を裂き、内臓を取り出して、内臓肉を取り出す。そして、イリスが空洞になった内臓部分に、魔術で氷を詰め込む。




一旦、これで放置する。もう一匹も同じようにする。今晩はウサギ料理に決定しそうだと思いながら、解体していくのであった。

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