80.アキラ、覚悟する。

 その時は、自然と身体が動いていたことに後からになって気付く。




馬も、俺の感情を察してくれたのか全力で駆けてくれる。弓を手にとり、駆けながら標準を定める。




その時、精霊さんが、




「宿主、新たな固有スキル【絶中】が発現しました。このスキルは絶対の命中です。」




と簡略化して説明してくれる。




「精霊さん、そのスキル、今使える?」




静かなる怒りを胸に抱きながら、聞く、




「はい、一発だけなら使えます。」




即答してくれる。そして、僕の意図を理解したのか、




「覚悟はよろしいのですか?」




それを見透かして問われる。その言葉を自分に言い聞かせるようにして、




「できてるよ。」




と呟く、その言葉を聞いた精霊さんも納得し、僕の意図する通りに能力やスキルを発動してくれる。




 弓を構え、矢に電流は最大限流し込む。




そして、力が漲ってくるような感覚を覚える。これがスキル【絶中】かと思いながら、狙いを頭らしき大男に定める・・・放つ。




男も、こちらに気付き、盾を構える。しかし、その顔は笑っている、どうせ奴は人を殺さないという前回の自信からだろう。




実際、前回の撃退では賊は誰ひとりとして死んではいない。なので、今回も死ぬことはないだろうと高を括くくっていた。




しかし、矢は勢いよく飛んでくる、その高さは標的である大男を大きく超える高さだった。男は外したかと思い、盾を納める。




次の瞬間、意識が途絶える。矢は男の頭上で直下して脳天を貫いたのであった。そして、大男がズドーンと倒れ込む。




周りは最初、なにかの間違いだと思い、




「頭、冗談はやめてくだせぇ。」




と言うが反応がないことに皆、動揺する。




その間に、アキラは矢を手に取り弦を引く。そして、矢を放つ!!一人の賊の頭を貫く。それに反応して、




「盾を構えろ!!」




と対応する。矢を構え放つ!!矢は放物線状を描く、そして急に角度を270度変えて、盾の後ろから賊の頭を貫く。




「ひぇ!!な、なんなんだ!!あいつ、化物か!!」




生き残っている数人の盗賊が密集隊形を組む。




今度は矢に先ほどより多くの電流を流しこみ、全力で矢を引き、放つ!!一瞬、閃光になり、ズドーンと雷が落ちたような音が辺りに響く。




ふたりの男の身体が崩れ落ちる。生き残った男がそれを見てみると、矢は、盾と男を貫通して後ろの男まで達していた。




混乱しているガラ空きになったスキマにまた矢を放つ。今度密集隊形にいた、ふたりの肺部分と大腿部に命中する。




一人は息が苦しくなり、顔色がだんだんと紫になっていく。もう一人は大腿部の血を抑えようとするが、手に負えなくなりって大量出血し、意識を失う。




その場に残った者は、盾を持ってぶつかろうとしてくる。馬が、180度回転し、後ろ脚でそいつを蹴り飛ばす。事前に回ることはなんとなくわかっていたので、しっかりと捕まっていた。




そして、盾の下敷きになった奴の上から、馬が全体重をかけてのしかかる。そいつは内臓が潰れ、口から血を噴き出して動かなくなる。




 残った盗賊には、今の少年は悪魔に見えただろう。盗賊の頭を失い、恐怖で混乱した盗賊たちは一目散に逃げていく。




「逃がすわけがないだろ。」




と馬で追撃する。




戦意を喪失した奴の始末は簡単だった。泣きながら、逃げていく奴の心臓を貫く。




またある者は、木の上に登ろうとするが、手を肩を狙らわれ、そのまま頭から落ち、動かなくなる。




数分で、残っていた奴らを全て始末した。イーグルビューで辺りを確認する。まだ息がある奴がいるかもしれないと全員が生きているかどうか確認し、盗賊全員の死亡を確認する。




この時のアキラの感情は怒りや悲しみではなく、無だった、何も感じなかったのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る