72.アキラ、歓迎される。
なぜ初対面の人に、精霊持ちだということがバレたのかその原因を探すが心当たりがない。
続けて長老らしき老婆は、後ろ3人をチラリと見て、
「ほばのふひとも、ぜいれひもっでるだな。」
とふたりが精霊持ちであることを言い当てる。
すると、周りの観衆が口々になにかを言っている。ある者は驚き、またある者は無言のままこちらをじっと見ている。
「なぜ、わかったんですか?」
老婆にそう聞くと、即答で答える。
「わは、ぜいれひろかをずることがなうなひ。」
どうやら、老婆は精霊を感じることができるらしい。
それによって、自分たちが精霊持ちだとバレた。そんなことが可能かと精霊さんに聞くと、
「耳長族、宿主にわかるように言うと、エルフ。その者達は、精霊が実体を持ったことにより生まれたとされております。ですので、精霊の気配を察することや能力を少し使うことをできる者が現れるのも可能かと存じ上げます。」
なるほど、ならばあの洞窟の前での異様な殺気や危機感の説明も理由がつく。今のところ敵ではないことにほっとする。
「ぞらでは、みごをづぐっれびとをみげにできまっぜん。さあさあ、ごったにごったに。」
と老婆は手招きをしている。僕たちは馬車を降りてそれについていくのであった。
老婆の家らしきところに案内される。ツリーハウスは、思ったよりも広く、老婆や助けた少女とその姉、それと僕ら4人が入るには十分なスペースがあった。
内装は和風な様相で、靴を脱いで板敷きの床に胡坐をかく。ほかのものたちは慣れない様子で、どう座ればいいか迷っているので僕は胡坐から正座へと姿勢を直す。
すると、3人はそれに倣い正座する。あとで痺れそうだなと思いながら、体勢をまた胡坐へと戻すのであった。
しばらく待っていると、助けた少女が近くに寄って来る。どうやら、暇そうなので遊び相手を探しに来たようだ。
「あんに、あんに、あぼそあぼそ。」
と言ってくる、段々と精霊さんの翻訳が正確になっているのを感じとった。
「ああ、いいよ。なにするの?」
ここは少女に決定権を渡す。しかし、少女は少し考え僕に抱きつく。
やん、幼女さんのボディタッチ最高。と邪な心が叫ぶが、それを振り払い、幼女の遊び相手をする。
「あ、そうだ、いいもん持ってるんだった。」
とふとあるもののことを思い出す。そのあるものとは、あの暇つぶしに編んだ細長い紐である。
もちろん、用途は簡単、あやとりだ。まぁ、やり方はあんまりわかんないんだけどね。幼女を太ももの上に乗せて、あやとりをそれっぽくやってみせると大変喜んだらしく、
「かみて、かみて。おがないおがない。」
とねだってくるので、形を維持したまま幼女の手に移す。幼女は目を輝かせて、見よう見まねで遊んでいる。
そのまま、見ていると段々と僕よりもうまくなっていき、高度なあやとりをし始める。
「精霊さん、もしかしてエルフって手先が器用とかある?」
と聞くと、
「はい、その通りでございます。」
即答で答えてくれる。そうこうしている内に、足音がして少女の姉と、老婆がやってくる。
手には料理を持っている。その料理は、森でとれた魚の肉や栗っぽい物の煮込み料理や、木の実などの摘み物などがあった。
4人ともその料理に、目を奪われる。そして、老婆が
「まあ、たぬべになりなんし。」
そういう、他の3人がこちら見て、どういう意味かと尋ねるアイコンタクトを送る。
「どうぞ、食べてだって。」
と言い、僕らは食べ始めるのであった。
「あ、この栗っぽいやつ、甘いわ。」
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