71.アキラ、多少わかる。
洞窟の上の木々から、敵意を感じる。
とても鋭いプレッシャーをかけてくる。まるでここから、立ち去れと言わんばかりに。常人なら、なにか嫌な予感を感じて逃げ出すレベルだ。
しかし、少女はそれに臆することなく、進んでというジェスチャーを出してくる。
洞窟まで30mくらい近づいたところで、少女がストップっぽいジェスチャーを出して、馬車を降りて洞窟の方へと走っていく。
そうして、洞窟の上に向かって何か叫ぶ。
すると、殺気が多少和らいだような気がする。少女が手を大きく振っている。来いという合図と捉え、馬車を進ませる。
先ほどとは違い、一応は警戒されているが敵意は感じない。
そして、洞窟の近くまでやってくる。敵意の出所の木々に目をやるが、そこには人の姿はないが、少し違和感があるような気がした。
少女がまた馬車に乗り、進んで進んでと僕の服を掴む。それに促されるかのように馬車を洞窟へと進めていく。
内部はうす暗く、細長い道や分かれ目が続くような感じであった。少女の指示で進んでいくと、そのうち、出口らしき光が見え始めてくるのであった。
その光の先へと進むと、現れたのはツリーハウスの家々や、村の真ん中を流れる小川、神秘的さを感じる村であった。
僕らその光景に驚き、そして状況を理解する。
「どうやら、エルフの村に辿りついちゃったみたいだね。」
と僕が呟くと、アルテシアが
「私も、エルフの存在は微かに聞いたことがありましたが、まさかこんなに神秘的とは思いませんでした。」
驚いた様子であたりを見渡す。
「存在は知っていたけど、こんな場所にあったとは知らなかったわ。」
イリスもアルテシアと同じように、初めて見る光景に圧巻されているようだ。テラは、開いた口が塞がらない状態になっている。
しかし、村も同様の様で、よそ者の僕達を見ようと、ツリーハウスからや、少し距離をおいて物珍しそうにしている。
すると、一人の美少女が案内してくれた少女に向かって駆け寄って来る。
「スワピウシタノユ、イズマイテル。」
「ゲムンマッセ、ダドモコアニハキュウハシテナンシ。」
何やら、姉らしきものに、少女が心配されて怒られている様子であった。
そして、少女が僕の方を指さし、姉に向かってニコニコと話す。すると、姉はこちらに近寄ってきて、手をとり
「ナリギトゴゼェマッサ。ナリギトゴゼェマッサ。」
とこちらを見つめて何度もその言葉を言う。助けた時に少女から言われた言葉であり、それが感謝を示す言葉とすぐにわかる。
そして、非言語的コミュニケーションの出番でニッコリスマイル。
どうやら、相手はそれを見て、安心した顔をする。唐突に精霊さんが、
「意志疎通能力が上昇、スキル【以心伝心】が上達してレベル2になりました。これで多少は、話している内容が理解できるかと思われます。」
丁度いいタイミングで言語学習してくれたようだ。
「あど、でうされまひたか?」
と若干、内容がわかるレベルになってきた。
「そのまま、伝えたいことを言っても大丈夫な仕様となっております。」
精霊さんが説明を入れてくれる。
「感謝されるほどでは、ありませんよ。当然のことをしたまでです。」
そう話すと、姉っぽい人はすこし間をおいて言った意味を理解したのか、
「あどりがどうごぜぇます。あどりがどうごぜぇます。」
何度もお礼を言うのであった。
すると、人だかりから老婆らしきものが出てくる。
「わばあ!!」
少女がそういうとその老婆に駆け寄り抱きつく。老婆は優しく撫でてあげている。姉らしきものが、
「わのむばの、ちょうそうでごぜぇます。」
手を老婆に向けて、僕に対して説明するような口調で言う。多分、この人が長老的な存在なのだろうと推測できる。
老婆はこちらをじっくりと見定め、何か気付いたような表情をして、
「なんず、ぜいれひもっでるだな。」
なんと老婆は見ただけで、自分が精霊を持っていることを言い当ててしまうのであった。
この時、アキラはなぜバレたのかと混乱するのであった。
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