51.アキラ、決する。

 その答えに総てを賭けて、僕はイリスからもらった塩を包みごと、相手の水魔術に入れ込む。




「なんだ、なにを入れ込んだ! 」




アルディカは驚いたが、なにも起きなかったことで、また攻撃を繰り返す。




まず、一手、残っているコインに最後の力を入れ込む。




それにより、若干ハンターセンスの反応が鈍くなる。腕、胴体、足などの傷が深くなるのが、痛みでわかる。




じりじりと闘技場の端の方へ追い込まれる。しかし、まだ時間が足りないことを悟る。




 一手、あと一手があれば、




「おい、アルディカさんあんたはこの国をどうするつもりだ。」




と土壇場でアルディカに質問を投げかける。




アルディカも最初はそんな戯言、無視しようと思っただろ。




しかし、優勢の状態でしかも女王陛下の目の前で、この問いを無視しても良いのだろうかと頭が回る。




「私は、この国を強く立派な国にするつもりでございます。もちろん、イリス殿も愛する所存です。」




貴族の中から拍手が湧く。




アルディカもなぜこんな茶番に付き合ったのだろうかと、後になって疑問に思っただろう。




この時、アキラのC(意思疎通)の異能がアルディカをそうさせたのは、アキラもこの時は気付いていなかった。




ほんの数秒だけ、隙が生まれる。




その一瞬に全能力をコインに入れ込み、撃つ態勢に移行する。




それを見て、アルディカも水圧カッターで攻撃しようとするが、危険だと判断したのか、水の盾を前面を展開する。




その顔は、勝利を確信した笑みを浮かべていた。それもそうだ、先ほどの攻撃で無意味なことは誰もが感じていたからだ。




その慢心が、アルディカに避けるという選択肢を判断させなかった。




「一か八かだ!!いっけぇええええ!!」




と叫び、コインを投げる。その閃光は、先ほどと同じように水の盾にぶつかる。




今度も効かないだろうと誰もが思ったその時、コインの勢いは落ちず、水の盾を貫く。




そして、アルディカの鳩尾に突き刺さる。




「ううぅ・・・。」




アルディカの身体は、一応、繋がってはいるが腹部に強烈なパンチを喰らったかの如く、腹を抱えても膝から落ちる。




顔は苦痛の表情を浮かべる。




すかさず、最後の力を振り絞りアルディカに近づき、手に電力を充填しスタンガンの要領で気絶させる。




その時、女王の声が響く。




「そこまで!!」




勝ったのだ、最後まで諦めなかったことにより勝てたのであった。




それを確信した途端に身体から力が抜け、誰かが、走って近づいてくるような気がした。




そんなことなどは、どうでもいいと思うほどに意識が遠のいていく。




そして、深い眠りへと落ちていくのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る