48.アキラ、着替える。

 城内に下ろされ、城の中へと入っていく。


荘厳な佇まい、煌びやかな装飾数々、ここは別世界のような感覚に陥る。


しかし、そんな内装とは裏腹に、ハンターセンスが嫌な雰囲気を察知する。


この場所は、昔から様々な怨念渦巻く場所だと察する。


嫌でも自分が、この場に相応しくないことを教えてくれる。


ふと、横を見るとカルラさんが立っていた。


「アキラ殿、テラ殿こちらへ。」


そう言われ、カルラさんに連れられ城内を移動する。


自分たちは、どこに連れられるのだろうか、そう思いながら後をついていく。


そして大きな扉の前に来ると、カルラさんがノックをする。


「イリス様、カルラにございます。二人を連れてまいりました。」


「どうぞ。」


その言葉を合図に、部屋の中に入る。


イリスの気品漂う正装に目が奪われる。


「きれいだ。」


思わず、口からその言葉が出てしまう。それを聞いたイリスは嬉しそうに、


「お褒めにあずかり光栄にございます。」


と社交場にふさわしい振舞いのお礼をする。ほぉ~~、ええやん!!


 そして、イリスが今後の計画を話し始める。僕たちはそれに耳を傾けるのである。


「まずは、家臣・諸侯たちにあなたを紹介いたします。うまく行けば、この結婚はなくなります。しかし、うまく行かなければ最悪、アルディカと決闘してもらうことになるかもしれません。」


その言葉に、緊張が走る。へぇ~~、決闘ねぇ・・・はぁ? 


まさか、決闘になるとは思ってもいなかった。


だが、そこでイリスは僕に最初から全力で、あの時、助けてくれた技を使えと言ってくる。


「先手必勝です。はい、これを。それでは、私はまだやることがございますので、失礼。」


と純銀製のコインを、2枚渡されて退室を促される。


カルラさんが呆れたように、溜息をつくような姿が見えた様な気がした。


その後、カルラさんが城を案内してくれている。その途中で、


「姫様はあのように無愛想な態度をとりましたが、内心ではあなたをすごく心配していることをご了承ください。それはそうと、姫様が渡そうとしていたものをどうぞ。」


と包みに入った物を渡される、中身を見ると塩だ。カルラさんが補足をいれる。


「我が国で、塩は魔を払うものとして、信じられています。御武運を祈っております。」


と言われ、最悪戦うしかないのかと、覚悟を決めるのであった。


 それから、小部屋に案内されて服装を着替えさせられる。この国の正装っぽい、貴族が着そうな服装をさせられる。


これがまた動きにくい! 


その後、大広間らしき場所に移動させられる、そこには多くの人がおり、皆それなりの地位が与えられている雰囲気があった。


その中でも一際目立ち、自分こそがこの場の支配者だと言わんばかりの者を見つける。カルラさんに小さいな声で耳打ちする。


「あれが、アルディカです。」


そうして、腹になにかを据えていそうな男を、僕は初めて見るのであった。

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