27.アキラ、ホームシック。

 翌日、早朝から僕たちは起き出す。テラはいつものことだが、僕は狩りのために、身支度をしている。




「弓よし、矢よし。ナイフよし。」




と気合を入れながら確認を行う。




なんたって、昨日はテラに申し訳ないことをした。それのせめてのお詫びとして、テラの好きな物を取って来ようと、考えたのである。




(ハツとレバー・・テラ好きだもんなぁ・・なんとしても獲物を取りたいなぁ・・。)




とテラを見ながら考えていると



「アキラ、頑張ってきてね、無理しちゃ駄目だよ。」




と自分を見透かされたかのように、諭され励まされる。




「ああ、危ないことはできるだけしないよ。夕方には帰ってくるよ。それじゃあ行ってくる!!」




そう言って、颯爽と家をあとにする。




 獲物を探す、ウサギでもと思ったのだが、毎回ウサギだと流石に飽きる。そう考え、違う動物でも射てみようと考えながら、東の森へと歩を進める。




段々と木々が、鬱蒼と茂ってくる。念のため、スキル【目的地】はテラの家にセットしている。




時折、自分をあざ笑うかのように、鳥の鳴き声がする。気持ちをしっかり持ち、歩みを進める。




精霊さんが話しかける。




「宿主、今日は一段と気合が、入っていらっしゃいますね。そんなに昨日のことを気にかけているのですか。」




その問いに対して、




「それは、男として女の子に嫌な思い出を思い出させたからね。穴埋めくらいはしないと、精々、今の僕にできるのは、これぐらいしかありません。」




まるで、自問自答のように、その言葉を自分に言い聞かせる。精霊さんもその言葉を聞いて




「私からは、何も言うことはありません。宿主の思うようにやってください。」




と喝を入れてくれる。さぁ、まずは足跡を探さねば!!




 段々と空に青が映えてくる頃、僕は湖を発見した。そこでは風下に立ち匍匐して、木の陰に隠れていた。




水を飲みに来る獲物をじっくりと待つ戦術をとったのである。




どれだけ待っただろうか、一向に現れない獲物を待ちながらじっと湖を見回す。ふと、元の世界に残してきた人達のことを考える。




(両親は今頃、悲しんでいるのだろうか、せめて、書き遺しでもあればよかったなぁ・・・。




友達は今頃、何してるんだろうか、居なくなって悲しんでるのかな。まさか、異世界に行ったなんて、誰も思わないだろうな・・・。)




何もしないと考えることを押し殺していた感情が、ふと止めなく湧き出る。異世界ホームシックに罹りそうだ。ポロポロと涙がで始める。




「な、なんで今、考えちゃうかな・・。考えないようにしてたのに・・。」




涙を止めようにも止まらない。今まで、押し殺して考えないようにしていた感情が、堰を切ったように溢れだす。




しかし、その時テラのことを思い出す。涙を拭い、しっかりと湖を見据える。




男として、手ぶらでは帰れない! そう腹を据えた瞬間であった。った。

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