Ⅱ.アキラ、異世界で初会話。

 やっとの思いで、見知らぬ土地で、最初の人に出会う僕であった。




しかし、村人らしき人が、遠くの方で作業していたのにも関わらず、僕に気付き、振り向く様が見えた。




そして、自分に気付くと、持っていた農具らしきものを手から滑らせて、慌てるようにして、家らしき建物に逃げていくのであった。




「あ、ちょっと待って!!」




今は、藁にも縋る思いであった僕は、その人を追いかけて家屋にかけていく。しかし、村人は中世の木造の家へと避難する。その小さいな家のドアは、完全に閉じてしまった。




「もしもし、お話だけでも・・・」




とドアをノックするような形で、懇願するも応答はなく。




辺りを見渡すが家らしきものはない。ここしか頼む場所がないことにを感じながら、僕は、その場に座りこむしかなかった。




次第にここまで休憩なしに歩いてきた疲労と、人の家の前と言う安心感で、まなこが重たくなってくる。



そして僕はその場で、うな垂れるようにして眠ってしまった。



∴ ∴ ∴ ∴ ∴



 何時間くらい寝たのだろうか、身体の節々が硬くなっている。



まぁ~~~、地べたで寝りゃそうなるかと、身体を伸ばそうと腕を動かすが動かない!! 


はぁ? 


なんと身体は縄で縛られていて、動かない。




「え・・・、ちょっと、待ってぇ・・・何コレ・・・動かない!! 」




とミミズのように、なんとか縄は外そうとするが一向に外れない。




すると、村人らしき人物の足音が、後ろから近づいてくるのを感じた。子供か女性かのような足音である。そして、僕は聞きなれない言葉を聞くのであった。




「アーグデギラバ、グーダデラ」





と華奢な声がそう囁く。身体の向きを変え、声の方向を向くと目の前に白髪の美少女がそこに立っていた。




「はい? 日本語でお願いします!! 」




そんなことより、聞いたことのない言語に、かなり困惑する。英語わかるかな、そんな淡い期待も、彼女の容姿を見て吹っ飛ぶ。




「WOW!!(ネイティブスピーカー) マジもんの美少女、初めてみた!! 」




その髪は白く絹の糸のように上品さが、瞳は真っ赤なルビーで吸い込まれるようで、可愛いな!! お~~~い、これが美少女って奴かとすべて感情が理解する。




そして、頭の上に付いてる犬のような耳は可愛さと神秘性を兼ね備えたチャームポイントだと言うだろう。




しかし、急にそれを目にすると、驚嘆の言葉しか出なかった。




(あれ・・・頭の上についてるのは耳なのか、コスプレかな・・・。僕は君をどういうキャラとして、見たらいいのかなぁ・・・。それよりも、すごい・・・おんにゃの子匂い・・・、甘酸っぱい青春の香り!! )




と少し動揺するが、それ以上におんにゃの子の良い匂いに心時めく。それを少女も感じとったのか、




「デギラホガイハークデラ、ココイルマ。」




と悲しそうにそう呟きながら、その瞳は、悲しさというよりも諦めを痛感するような目をしながら、耳を逆立ていた。




まぁ、すごい! それ電動ですか。と驚くが妙に生々しい耳だ、本当にコスプレかと疑ってしまう。



∴ ∴ ∴ ∴ ∴



 そんな僕の感情は置いといて、僕は一旦彼女から目線を逸らし、この場から逃げる手段はないかと探す。だって、寝てる人を縛るような輩は、碌な奴じゃないよな!!



そう思いながら、辺りをキョロキョロと情報収集をする。




ふと、食欲をそそる良い匂いに、鼻が気付く。その瞬間、場違いな音が鳴り響く!!




「ぐぅ~~~~~~~!!!」




と昨日から、何も碌なものを食っていないため、胃が突然の自己主張をし始めたのであった。その場が凍る。




僕は顔を真っ赤にしながら、彼女は意表を突かれたように、固まっていた。




「僕じゃない・・・ボクジャナイ・・・ボクジャナイ・・・。」



( ◉ - ◉ )




僕じゃないっすよ、そんな関係ないっすよ。みたいな顔をして、その場を誤魔化してみるが、



もう一度、腹の虫君が産声を上げる!!



『ぐぅ~~~~~!! 』



はい、空腹。そんな諦めた顔で彼女を見る。彼女もキョトンとした顔でそれに釣られて僕もキョトンとする。




「メバイホウイライルマ? 」




と彼女は、驚きなら問いかける。




しかし、まったく知らない言語に、僕はなんと言っていいのかわからない。代わりに腹の虫君が答える。




「ぐぅ~~~!! (そうっすね!! )」




となんとも情けない音が出る。僕はさらに顔を赤めながら、もう涙目である。まぁ、この場合のアンサーはこれが一番やな・・・。




(しかし、こんな緊迫した時に、腹が鳴るなんて。しかも、止まらねぇ・・・。)



ぐぅ~! ぐぅ~! ドゥドゥン!! ぐぅ~!




これに呆れたのか、彼女の生々しいケモノ耳が逆立てるのをやめる。




「ア、ハテハテルイ、デギラモココケムラ」




そう言って、茶色の容器を持ってくる。容器の中からは良い匂いがして、中身を見ると野菜らしきものと、肉らしきものを煮込んでいると考えられる。



反射的に、お腹が鳴り、首を縦に振る。




すると、彼女はスプーンらしきものを使い、煮込んだスープを僕に飲まそうとする。



「えっ・・・ちょ、ちょっと・・・アツゥ!! 猫舌だから、アツゥ!! アツゥ!! あっ・・・フフフ・・・モグモグモグ・・・。」




だが、久しぶりの温かい物は、僕の身体を温める。彼女、心配そうに僕の顔を見ていたが、僕が口を開けると、今度は野菜をすくって口に入れようとする。




少し息を吹きかけると、彼女の手が止まるが、僕が口を開けると押し込んでくれた。




キャベツのような葉物野菜の甘さが、口の中に広がり、久しぶりの固形物に、食べ物のありがたみを実感し、顔がにやける。




その表情を見ていた彼女が、少しほほ笑んだような気がした。いやぁ~~~。この子良い子だわ!! 良い子!! 疑うとかマジありえないわ!!



∴ ∴ ∴ ∴ ∴



 それから、スープを2杯ほど食べ終えたところで、腹が膨れる。そして、あることに気付く。




やはり、ケモノ耳は、直で頭に繋がっていて、ヒョコヒョコと小刻みに動いている。僕は一言、




「あ、それ直なんですか?」




その言葉しか出なかったのである。

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