第21話
「でも、どうしてここに?」
「わからない?」
ナンシーは、不思議そうに尋ねるが、普通わからない。
「じゃあ、2019年の時代とこの1970年の時代、どう違う?」
「どうと言われても、灯りが少ないとしか・・・」
「他には?」
「他に?」
何だろう・・・
1070年から2019年、49年の開きがある。
僕はまだ生まれていない。
親父も間もない。
しかし、それだけ時が経つといろいろある。
「そう、いろいろだよ?」
「いろいろ?」
「うん」
ナンシーは、頷く。
「人って、凄いね。僅かの時間に科学を発展させている」
「確かに」
「1970年には、実現不可能と思われていた事が、現実の物となっているね」
「ネットとか、スマホとか?」
「うん。この時代では、夢にしか思わなかったね・・・でも・・・」
「でも?」
ナンシーは、空を見上げる。
「空は、変わらないね。地上の物を見守っている」
「見下ろしているんじゃあ」
「お父さんも、同じ事言ってたよ。悲観的なんだね」
反論は、出来ない。
「君をここへ連れてきたのはね・・・」
「うん」
「空は見ているってこと」
「見ている?」
「うん。でも、ストーカーではなくてね」
「うん」
少しの間があった。
「言ったよね。どんなに星が見えなくても、太陽と月だけは見えるって」
「ああ、銭湯の帰りね」
「なぜだかわかる」
「大きいから」
「外れ。それだけではないよ」
「というと?」
【すぐ近くで、君を見守っている人が、いるってこと。近くにいて、気がつかないけどね】
そのあと、どうなったかわからない。
ただ、1970年の世界を、少しだけ見た気がする。
写真で見たのとは少し、違っていた。
1970年・・・
EXPO70が、大阪であった年だ。
今も残っているが、太陽の塔が誇らしく立っていた気がする。
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