神閾

作者 鉈手ココ

15

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★★★ Excellent!!!

亡き母の形見となる指輪を受けとったその日から、明日歌は悪夢を見るようになった。
はずれない指輪の導くまま、眠った先は今夜も悪夢。彼女はそこで異形の化け物に襲われる。
朽ちた身体。滴る黒い体液。そのおぞましさに怯え、逃げまどう彼女を助けたのは、話もしたことがないはずのクラスメイト、藤村翡翠。
彼は言う。ここは“ゆめ”であっても“夢”にあらず。現世と常世の狭間、神の領域。
神聖な世界に満ちるのは、風、水、草、そして血の匂い……。
翡翠と出会い、共に歩むことで、明日歌はそれまでの認知外の世界だけでなく自分自身とも向き合いはじめるようになる。

なんと色に溢れた話かと思いました。
親友にベタ惚れする女の子。『天才百合漫画家』と謳われる男の子。
豪快な神さまに、ツンデレな神さま。奇妙な格好の幼女な神さまなどなど、高校生サイドだけでなく神さまたちもそれぞれの個性であふれています。

でもその奥を覗くと、光と影の対比がはっきりとしている。
自分にはどうすることもできない不条理。それら対する怒りや苦しみを積み上げて成りたつ歴史。
そうするしかないと頭ではわかっていても、膨れあがる恨み辛みは大きく集まりねじれていき。
そんなものと対峙しても、さみしさや苦しみを知っているからこそ二人の優しさは温かく、互いを『守りたい』と願う心は強い。

とはいえここは明日歌にとってはスタートラインに立ったお話。
本作では解明されなかった謎がいくつも残ります。
母親のこと。始まりの夜のタイミング。主となる神や、“彼”とのこと。
それら含めて、ひっそりと続編に期待している作品です。
(レビューで書いてる時点でひっそりしてない)

★★★ Excellent!!!

睡眠障害に悩まされ、夢の中で異形に襲われた高校生・白瀬明日歌と、夢の中で明日歌を助けた同級生・藤村翡翠。
「神閾」という神聖な領域に干渉できる「巫女」の素質を持った二人の主人公は、神閾で異形と化した神々の痛みを癒していく……。

章ごとに現れる個性豊かな神々、主人公たちを取り巻く登場人物の可愛らしさ・実在感に心惹かれる現代ファンタジー小説です。
他者との人間関係に思い悩んだ過去を持つ明日歌と、秘匿された生い立ちから心に欠落を消えたような翡翠の二人が、癒しの力を通して心の距離を縮めていく課程は、ジュブナイル小説としての側面もあると思います。物語の終盤では、大いなる試練に立ち向かう二人を、気づけば真剣に応援していました。

そして迎えたラスト。温かな癒しの力が、読者を優しく包み込むはず。とても面白かったです。

★★★ Excellent!!!

 異次元を舞台に、土着の神様を変質・暴走から救うべく奮闘する少年少女を描いた今作。「ゆめ」だからこその幻想的な風景や迫力のアクションは、想像力に爽快な刺激を届けてくれます。日本神話などをベースにした、神様の力と人の営みとの繋がりの描き方も素敵です。「見えていないだけで、もしかしたら」と思ってしまうような説得力もありますし。

 神様たちとの和やかな交流を経つつも、後半で待ち構える展開はなかなかにハードです。暗躍する影の手強さも、その背景にある陰惨な歴史も、昏い重力で心を引きつけます。
 だからこそ、主人公たちが発揮する「優しさ」が沁みます。能力だけではなく、誰かのために苦しみを受け止める心で、呪いと対峙する彼女たちの姿。熱く、じんわりと心を揺さぶる物語でした。

 そして、青春真っ盛りのキャラクターたちの魅力も要注目です。戦友としては最高に格好いい明日歌ちゃん&翡翠くんですが、高校生どうしとしては、なんともじれったい……
 賑やかな親友、毒舌な後輩、健気な(友達の)妹……といった人間サイドに加えて。老若男女さまざまな姿を取る神様にも「可愛い」が溢れています、あなたの推しがきっと見つかる鉈手キュートネスは健在……! (ちなみに僕は小雨ちゃん推しです、百合好き同士としていいお酒が……あっ未成年……)

 日本の日々に根ざした幻想譚、あなたも癒やされにいらっしゃいませんか?

★★★ Excellent!!!

翡翠と明日歌のダブル主人公の本作。

このふたり似ていないようで、読み進めていくうちに「あ、実は似たもの同士?」と思うように。
ゆめのなかの神域で交流を深めていく、翡翠と明日歌がとてもイイ…!

淡い色彩、霧が立ち込める神聖で美しい神々の領域。
そんなイメージだったんですけど、そこは日本民俗学や日本書記などの文献をベースにする本作。
鮮やかに飛び散る血飛沫や、拷問後シーンなどもあります。
しかし、それすらも儚く美しいのが凄い。

般若の面を被った少女や、気を抜くと幼女の姿になってしまう神など、性癖に突き刺さるキャラクターが満載の本作。
なかでも、天才高校生百合漫画家、詩衣菜先生こと、漫画研究部員の椎名くんは、本品に欠かせないキャラクターだと思います(笑)
そんな百合好きな椎名くんに言いたい。尊い百合は身近にいる、と。
明日歌の友人を自負する美月ちゃんがまた可愛いです。明日歌への一方的なラブがすごい。百合じゃん。百合なのです!
本作は百合好きにもおすすめですよ……!

そして、なんと言ってもクライマックス。
これだけは言いたい。
「双子の魂百までっていうじゃない?」という台詞、エモすぎ……!
読んだらわかる、このエモさ。

ぜひぜひ、読んでみて下さい!!