第71話 水着

今年も体育祭が無事終わり、生徒会のお仕事は一段落といったところ。でも、勉強の方は、模試があったり、期末テストが近づいてきたりと、全然一段落ついていない。相変わらず、スマホとにらめっこしたり、塾の先生と面談したりと、忙しい。でも、ちょっとずつだけど私の成績が上がっていることは、確かだった。まあ、模試のお兄ちゃんと同じ大学の判定はDだったんだけどね! Eじゃないだけ、ましだと思おう。これから、これから。何事も前向きに。


 と、期末テストに向けて勉強していると、彩月ちゃんから、メールが来た。

『今週末、出掛けない?』

テストは再来週だ。だから、今週くらい遊んでもいいよね。彩月ちゃんには、もちろん、と可愛いスタンプと共に、メールを送る。


 彩月ちゃんとお出かけするの久々だ。楽しみだなぁ。





 「朱里ー」

「彩月ちゃん」

駅で待ち合わせをした場所にいくと、もう、彩月ちゃんは到着していた。

「あれ、朱里、なんかいい指輪つけるね」

彩月ちゃんは私の手を見るなり、にやにやしながらそう言った。


 「うん、お兄ちゃんにもらって……」

お兄ちゃんからもらった指輪は、平日はお守り袋にいれて持ち歩いて、休日は、身につけて。常にどこにいくのも一緒だ。


「彩月ちゃんもいい指輪つけてるね」

仕返しとばかりに彩月ちゃんの指輪も指摘すると、彩月ちゃんは笑った。


 「いいでしょ。まぁ、お互い素敵な彼氏がいて良かったよね」

「うん」

「じゃあ、行こうか」


 電車に乗って、ショッピングセンターに行く。もう、夏だからか、水着がたくさん飾られていた。


 「夏だね」

「うん、夏ね。というわけで、水着を買おう」

びしっと、彩月ちゃんが水着を指差した。

「えっ、でも、彩月ちゃんは去年着た水着があるんじゃ……」

私も去年着た水着があるから、買う必要はないよね? そういうと、彩月ちゃんは甘いわ、と言った。


 「水着は毎年変えるものだよ」

えっそうなの? サイズが合わなくなったとかならともかく、そうじゃなきゃ、新しく買わないものかと思っていた。


 「だって、小鳥遊先輩をどきどきさせたいでしょう?」

「う、うん。それはもちろん」

「そんな夏にピッタリのアイテムが水着なのよ」


 そ、そうなんだ。でも、お兄ちゃんは受験生だし、夏はあまりお出かけできないんじゃないかな。


 「そうね、受験生にとっても夏は大事だよ。でも、今年の夏は一度しかないのよ! 今、楽しまなきゃ。それとも、朱里は小鳥遊先輩とプール行きたくない?」

「……行きたい、です」

じゃあ、買おう。と、颯爽と彩月ちゃんは水着売り場を歩いていく。


 「彩月ちゃーん」

「どうしたの? 朱里」

「なんていうか、ここは、私たちにはちょっと大人すぎかなぁーって」

彩月ちゃんが立ち止まったのは、なんとビキニのコーナーだった。さすがにビキニは、まだ早い。早いよね?


 「私たちだって、女子高生なんだし、ビキニくらい普通だよ」

そういって、彩月ちゃんは私に白いフリルの水着を差し出した。

「これとか、朱里に似合うんじゃないかな?」

「ぬ、布面積がちょっと……」

その後もあれじゃない、これじゃない、と二人で、水着とにらめっこし、新たな水着を購入した。




 ショッピングセンターから電車に乗って駅に戻り、彩月ちゃんと別れる。すると、ちょうどお兄ちゃんが迎えに来てくれた。


 「お帰り、朱里」

「ただいま、お兄ちゃん」

お兄ちゃんが買い物袋に目を止めた。

「何買ったの?」

「……水着。だからね、もし、期末テストで、全部七十点以上とれたら、一緒にプールに行ってくれないかな?」

どきどきしながら、お兄ちゃんの返答を待つ。お兄ちゃんは、頷いた。


 「もちろん、いいよ」

「本当?」

お兄ちゃんは、夏だし勉強で忙しいって断られるかと思ってた。私がそういうと、お兄ちゃんは笑った。


 「受験生でも息抜きは必要だし、朱里の水着、見たいしね」

現状の私の体型は標準なので、そこまで期待のこもった目をされるような代物ではない。

「ダイエット、頑張るね……」

「ダイエットなんてしなくても、朱里は可愛いよ?」


 「私が、気にするの!」



 期末テストに向けて勉強と、プールに向けてダイエット。両方、頑張ろう。

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