第63話 将来の夢 真
「おっ、朱里今日も張り切ってるな」
今日も品数の多い朝食をみて、お父さんが、笑う。ホワイトデーの一件で、お兄ちゃんが私のことが好きだっていう自信はちょっとだけついた。けど、もっと好きになってもらえるように、頑張るのはいいことだよね。
そうおもって、朝食作りに励んでいる。それに、お兄ちゃんの好みのタイプが料理上手な人っていうのもあるけれども、それを差し引いても料理は好きだ。
「ふふ、朱里ちゃんは本当にお料理が好きね」
「お義母さん!」
気づけば、お義母さんも台所に来ていた。
「朱里ちゃんは、将来はお料理の道に進むの?」
「……え?」
料理を、職業に? 全く考えたことがなかった。私が驚いていると、慌ててお義母さんは否定する。
「あっ、ごめんなさい。別に朱里ちゃんの将来を強制するつもりはないのよ」
「ううん、お義母さん。全然考えたことがなかったから、びっくりしただけだよ」
そっか。でも、そんな道もあるんだ。全く決まっていなかった進路が少しだけ、見えた気がした。
「料理系の学部かぁ」
「うん。変かな?」
学校に行って、彩月ちゃんに相談してみる。
「それなら、専門学校とかもいいかもね。でも、意外だった。朱里のことだから、きっと、小鳥遊先輩と同じ大学にとにかく行けたら学部とか関係ないっていうかと思ってたわ」
「あはは、前の私だったらそうだったかも」
私の頭のレベルで、お兄ちゃんと同じ大学にいけるかはさておき。きっと、お兄ちゃんと一緒にいるために、頑張ったと思う。同じ大学でも、学部によって偏差値は変わってくるっていうし。でも、お兄ちゃんと同じ大学に行きたいっていうのは勉強のモチベーションにもなるだろうし、いいことだと思うけれど、少なくとも学部は自分の意思で決めなきゃだめだと今なら思う。
私の将来の責任は私で持たなきゃ。お兄ちゃんの夢にただ乗りはよくないよね。
「よかったね、夢が見つかって」
「うん、ありがとう。まだ、夢って言えるほど、固まってるわけではないけど。彩月ちゃんは、何学部を目指すか決まってる?」
彩月ちゃんは早い段階で、文系っていってたし、もう、行きたい学部とかは決まってそうだなぁ。案の定、彩月ちゃんは笑った。
「経済学部。それで、税理士になろうと思って」
「税理士! かっこいいね」
「お金、好きだから」
そうなんだ。意外だ。でも、好きなことを仕事にできたら、それが一番だよね。
進路面談の紙には、料理関係とだけ書いて提出した。すると、担任の先生は、色々と調べてくれていて、ぼんやりしていた私の将来がもっと、固まったと思う。まだ、二年生になっていないから、特例として、理系になるのもありだと言われた。保健学科の中で栄養学が学べる学校もあるみたいだ。
なるほど。彩月ちゃんとクラスが離れてしまうのは、残念だけれど、先生と相談して理系にすることにした。先生には、文系の方が好きな科目が多いからという理由で適当に文系に決めてしまったばっかりに、迷惑をかけてしまって申し訳ない。
さて、期末テストも終わったし、進路面談も終わった。短い春休みが過ぎたら、私も先輩になる。先輩として、頑張るぞ。
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