第101話 東京:浜松より東京の方が富士山からは近いってツ〇ッターで言ってた
天王洲アイル駅でりんかい線へと乗り換えた。乗り換えたと言っても1度改札を出たのでこれを乗り換えと呼んで良いのか分からない。交通系ICカードでどちらも乗れるのでそう労力はかからないけど。切符だったら文句を吐いていたかもしれない。
りんかい線は地面より下を走っていて、乗車するにあたっては当然地下へと階段を下りていった。モノレールで高いところを通ったかと思えば今度は地下で、上へ下へと忙しい。地中だろうが空中だろうが東京は活用する。いや、活用せざるを得ない。そんな事情を地味に体で味わった。
りんかい線に乗り込んでしばし車両に揺られる。国際展示場までは2駅だ。たぶん10分かそこらで到着すると思う。駅を出たら目的地は目の前なので、もうルートを調べる必要も無い。だから今は手持無沙汰に車窓の外を眺めるしかなかった。しかしここはトンネルの中なので、暗く塗りつぶされたガラスに映るのは自分だけだ。夏なのに長袖のジャケットを着て暑苦しい。帽子を脱いでみたら印象が変わるだろうかと思って脱いでみたが、べしゃっとつぶれた髪が現れてすぐにかぶり直した。モノレールに乗っている間に汗はずいぶん引いたが、それでも不快感はまだつきまとっている。
そこではたと思い至る。
(この状態で未天に会、う……?)
頬を伝う汗は暑さによるものか、それとも冷や汗だったのか。
そんなこんなで国際展示場——のひとつ前、東京テレポートで下車した。
パッと
駅の目の前にあったショッピングモールで買い物を済ませてから歩いて南下する。目的地まで少し距離があったが、バイト先→学校の距離とほとんど変わらないことと、目的地が目的地なだけあって歩くことにした。ずっと公園の中を歩くことができたので移動もスムーズだった。
そうして辿り着いた先にあったのは。
(東京はなんでもあるなぁ……)
目の前に掲げられる「温泉」の文字だった。
受付でリストバンドを受け取る。館内での支払いは全てこのリストバンドで行い、退館時にまとめて精算するスタイルらしい。財布を持ち歩かなくて良いのは便利だ。暑さの余韻でフラフラしながら更衣室に向かい、そこで浴衣に着替える。更衣室の先はお土産が買えたりリクリエーションができるエリアだったが、それはひとまず置いておいて通過。すぐさま温泉へ向かった。
脱衣所で衣類を脱いで浴場に向かう。扉を開けた瞬間、むわっとした蒸気に包まれた。高い天井、広い室内に、いくつもの湯船が用意されていた。露天風呂もあるようだ。壁には赤い富士山が描かれていた。ここまで来て富士山だった。しかし赤富士なあたり山梨県側から見た富士山なのかもしれない。
全身を洗ってから適当な湯船に浸かる。何時間も走った疲れが溶けていくようだった。いくつかの風呂を味わって、最終的に落ち着いたのは寝転がるように湯船に浸かることができるバブルバスだった。
「はぁー……」
早朝に出発したこともあり、その体勢と心地良さから眠りに落ちてしまいそうだった。
「…………たまらん」
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