第24話 フィリー:友達
「じゃ~ん! これが私のDS400C!」
店の外に引っ張り出された。せめてハンバーガーは置かせてほしかった。仕方がないのでDS400Cを眺めつつ食す。
(こんな真ん前に駐車してあって見落とすとは……)
今度からどこかに立ち寄った時は、DS400Cが停まっていないか必ず確認するようにしよう。バーガーも落ち着いて食べさせてくれない女とは行動を共にできない。
「……」
ドラッグスター400クラシック。
ヤマハ製のアメリカン・バイクだ。車体の中央にすえられた空冷Vツインエンジンが目を引いた。
アメリカンスタイルのバイクは、最近は【クルーザー】と呼ばれることが多いらしい。アメリカの広大な大地を海原にみたて、長距離を悠々と
(……大学生かな。大学生だよね)
持ち主のフィリーさんは私よりも背が高い。おそらく背丈は170cm代後半といったところだろう。166cmの私でも視線が少し上向きになる。170cm代となると、女性としては高身長な部類であるように思う――デカいのはバストだけではないらしい。彼女ならこのバイクに乗っても様になるに違いなかった。この体格で高校生だとしたら反則だ。
(適当に褒めて流そう……)
ハンバーガーをたいらげ、バーガーを包んでいた紙はたたんでポケットに押し込む。口の中身を飲み込んだあと、さしあたり率直な感想を述べる。
「ロー&ロング。絵に描いたようなアメリカンですね」
「そう! DS400シリーズの魅力はそこなの! 本場メーカーのアメリカンにも負けない迫力! 重量感! スタイリング! たしかに日本製のアメリカンは日本人の体格に合わせて作られてるせいか
声がでかい距離が近いテンションが高い。一言褒めただけでこれなのか。
「1100ccとか250ccとかもあるけど、私が好きなのはやっぱりこれ! 400クラシック! この排気量に似合わない風格と高級感がたまらないわ! 低めの排気量なのにパフォーマンスの高いバイクを【クラスレス】って呼んだりするけど、ドラッグスターはスタイリングのクラスレスといえるわ。大排気量のバイクにも負けるとも劣らないスタイリングなのに中型だから、高校生の私でも乗れるなんて最高!!」
「そうですね…………え?」
彼女は今なんと言った?
「こ、高校生っ?」
「? あー、よく間違われるんですけど、わたし高校生です。高校2年」
「なっ」
お、同い年……!?
この恵まれ過ぎたボディで……!?
思わず全身をまじまじ眺めてしまった。
まったく信じがたいことだった。べつに自分の体の形のことなどあまり気にしていない。他人と比べても仕方がない。太ってなければいいだろうくらいに思っている。だが、ここまで格の違いを見せつけられると衝撃を受けないのも難しかった。
(クラスレスなバイクの持ち主もクラスレスだったか……)
「そうだったんだ……同い年だったんだね……」
「え゛!?」
驚きの声を上げたのは今度はフィリーさんだった。
「お、おねーさんも……じゃない、あなたも高校生だったの!? しかも同い年!? 大学生じゃなくて!?」
「あー、うん」
というか私も大学生に見えるのだろうか。
「……!」
彼女は驚きに見張った両目をふわりとくずす。一瞬だけ体を震わせるような仕草を見せると、私の両手をつかみ取る。
「
世をあまねく照らす光に似た眩い笑顔を浮かべ、彼女は体を跳ねさせながら叫んでいた。その声につられた公園内の人々が、こちらに視線を集めたのがわかった。彼女は私の両手を、自分の胸元にぐっと引き寄せた。
「私はフレイア・グロリオサ! あなたと友達になりたい!!」
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