第35話 宣戦布告

愛理もそうだが、その場にいる全員やテレビ中継を見ている視聴者、そしてレポータなど、多くの人々がその異様な光景に恐怖を感じていた。


人型の怪人を黒い霧が包み込むと、その霧の中から骨が折れる音や肉が引き裂かれる音が聞こえ始めていた。 愛理はその音を聞いて、直感的に危険だと感じ取って長剣を手に黒い霧を切り裂こうとした。 しかし黒い霧に長剣が触れた瞬間、愛理は黒い霧が弾け飛んで消えた衝撃で吹き飛んでしまった。 愛理はすぐに起き上がると、長剣を構えて戦闘態勢をとった。


黒い霧が晴れたその場にいたはずの人型の怪人の姿は、まるで人間の成人男性と思えるほどに変化をしていた。 しかし、その左腕はに愛理に切り落とされたままであった。


「この姿は……お前たち人間と同じ姿か……」


片言ではなくなった人型の怪人は、空を見上げて余計なことをと呟いていた。 そして、失った左腕の切断面を撫でていると、お前の顔が今はっきりと見えるぞと愛理に話しかける。


「顔がはっきり……今までは見えなかったとでも?」


愛理は人間に変化をした、元人型の怪人の姿を観察することにした。 筋骨隆々になり、身長は愛理より十五センチ高いようであった。 服は薄い茶色のシャツと、薄い青色のズボンを履いていた。 目の前にいる人間に変化をした人型の怪人は、人間に変化をしたことにより生えたショートヘアの頭髪を掻きながらに人間の身体は煩わしいなと言う。


「傷口が痛むし、身体は痒いし、お前達はこんな身体で俺たちと戦っていたのか」


人間に変化をした人型の怪人は、その場にいる愛理たちを突然指さした。 そして、口を静かに開いて一言発する。


「俺たちは、お前たち人類に宣戦布告をする」


そう言葉を発した。 その言葉を聞いた愛理や特殊魔法部隊の人たちが、戦慄のような顔をしていた。


「宣戦布告……だと……!?」


特殊魔法部隊の隊長が、宣戦布告だとと驚いていると、元人型の怪人が人間になったのだから名前が必要だなと呟いている。 そして、元人型の怪人は俺のことはこれからシンと呼べと言う。 シンはお前達日本人の言葉で言うカタカナでシンだぞと二回言った。


「なんでシンなのよ! 突然名前だなんて本当に怪物だったの?」


愛理は元人型の怪人に対して本当に怪物だったのかと聞くと、シンと名乗りだした元人型の怪人は、確かに俺は怪物として製造されたが、今は違うと返す。


「製造? 怪物は誰かに作られているの?」


愛理は少しでも情報を聞き出そうとするも、その思惑は見透かされてしまう。


「何かを聞き出そうとしても無駄だ。 俺から話せることは、後一つだけだ」


そう言い右手の人差し指を空に向け、空の上の創造主からの命令で、お前たち人間を殲滅することだけだと言った。


「殲滅とか、創造主ってなによ! 勝ってに決めないで!」


愛理がそう叫ぶと、シンはその創造主はお前たち人間の創造主でもあると言う。


「どういう意味なの……」


愛理が困惑していると、遠くにいる葵がそんなこと関係ないと叫ぶ。


「私たちは私たちです! 創造主だから勝ってに創造して、勝ってに殲滅していいんですか!?」


葵が思ったことを叫ぶも、シンは創造主に聞けとしか言わなかった。


「そうですか……でも、それでも私は抗います! 大切な友達との笑える毎日のために!」


葵が愛理を見ながら言うと、シンはせいぜい抗ってみせろと言い、シンの後ろに現れた白い扉を開けてその場から消えた。


シンが消えたことにより、残された怪物は共に現れた怪物一体だけになったが、既にその怪物は倒されていた。 教師たちと特殊魔法部隊によって愛理たちが戦っている間に倒されていたようである。 現れた怪物が消えたからか、その場の緊張感が解けたようで、愛理はその場に力なく倒れてしまった。

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