第30話 負けない気持ち

「葵ちゃん! 早く逃げて!」


愛理が葵の名前を叫ぶと、その声が聞こえたのか愛理の方向を向く。 愛理が立っていることを見た葵は、良かったと安堵をしていた。


「私は無事だから! 葵ちゃんもすぐに逃げて!」


愛理は女性隊員に連れられながら、葵に対して逃げてと言う。 しかし、葵は皆が逃げるまで特殊魔法部隊の人たちと一緒に戦うと槍を構えていた。 その葵の姿を見ていた特殊魔法部隊の体調と思われる三十代に見える筋骨隆々の短髪の男性は、葵に対して無理はするなと話しかけた。


「はい! 死にたくないですから!」


その言葉を発すると、葵は槍で人型の怪人の足止めに専念することにした。 葵は短髪の男性と共に人型の怪物の相手をし、他の隊員たちは生徒と教員たちの保護や、もう一体の怪物と戦っていた。 星空学園高等学校に救援に来てくれた特殊魔法部隊は十人であるが、今の現状を打破するには心許ないと葵は感じていた。 しかし、横にいる男性やもう一体の怪物を相手にしている隊員たちを見ていると、十分な数であったのだろうと感じ始めていた。


葵は短髪の男性と共に人型の怪物との戦いが始まり、葵も短髪の男性と共に攻撃を繰り出す。 葵は槍で攻撃を繰り出し、短髪の男性は拳に魔力を纏って攻撃を繰り出していた。 人型の怪人の両腕の刀での攻撃を掻い潜り、短髪の男性は」腹部や脇腹に拳にて打撃を与えている。 葵はその短髪の男性の攻撃終わりに、突きや切り裂きをしようと近づく。 しかし、葵の槍での攻撃はことごとく人型の怪人に防がれ、かわされてしまう。


その姿を見た短髪の男性は、葵に何か魔法での支援攻撃はないのかと話しかける。 葵はそれに対して、まだ人型の怪人に効果がある魔法を習得していませんと返す。


「なら、君はもう避難をするんだ! お友達はもう避難したみたいだぞ!」


その言葉を聞いた葵は、もういいんだと悟った。 私はまだ役に立たないし、この槍も上手く扱うことが出来ない現実が悲しかった。


「分かりました……愛理ちゃんたちと一緒に避難します!」


そう言い、槍を右手に掴みながら愛理たちの方に走っていく。 避難する葵の姿を見た短髪の男性は、それでいいと呟き、拳に再度力を込めて人型の怪人と対峙をする。


愛理たちの方に避難をしている葵は、もうすぐ愛理たちのもとに到着をするという瞬間、背後に悪寒を感じたので後ろを振り向いた。 すると、愛理のすぐ後ろに短髪の男性の腹部を貫きながら人型の怪人が突進して向かってきていた。愛理は葵の背後に迫っている人型の怪人を見て、後ろと叫んでいた。 葵自身も背後の悪寒に気が付いて振り向いていたので、自身に差し迫った死に怯えていた。


「黙ってやられないわ!」


身体を捻って、槍を人型の怪人の腹部に突き刺すことが出来た。 その攻撃を見た短髪の男性は、自身の腹部を貫いている刀を掴んで、右足で人型の怪人の腹部を蹴り、後方に吹き飛ばすことが出来た。


「だ、大丈夫ですか!? 凄い血が出てますけど……」


左の脇腹を押さえながら、短髪の男性は大丈夫だと息を切らせながら言う。 愛理はその二人の様子を見て、私は何もできないのかと悔しく感じていると、頭の中に無機質な言葉が語り掛けてくる感じがした。


「この声は何……友達を思う心が、新たな力を呼び起こすって……なんの力よ……」


痛む頭部を押さえながら、頭の中に浮かび上がった呪文を唱えようとする。 愛理はふらつきながら立ち上がると、葵と短髪の男性に避けてと叫ぶ。


「愛理ちゃん! 無理しちゃダメだよ! 何をするつもりなの!」


葵が話しかけると、何かやろうとしているんだろうと短髪の男性が葵の左手を掴んでその場から離れようとしていた。


「この魔法は星空校長が使用した魔法と同じね……この魔法で人型の怪人にダメージを! 絶光!」


愛理は右手の掌を人型の怪人に向けると、星空校長が放った魔法と同じ絶光が放たれた。 人型の怪人は目を見開いて驚くも、両腕の刀をクロスして絶光を防ごうとした。

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