第149話 ソルの告白
家の前。 土を固めて舗装しただけの簡素な道。
2人はそこを歩く。
「それで今日はなんのようだ?」とベルト。
出かける直前、事前の約束もなく現れたソルは散歩を提案した。
明らかに不自然な申し出だ。
どういうつもりなのか? ベルトは、そう言外に問いかけている。
対してソルは、どこか飄々とした感じでこう続けた。
「実は私、人類の裏切り者だったのですよ。あっ 驚きましたね。流石に察しがいい……いえいえ、決してふざけているわけでも冗談でもありません。少しだけ、出会ったばかりの頃に馬車に置いていかれた意趣返しもないわけでもありませんが……兎にも角にも、魔王と繋がっていたんですよ、私」
流暢にペラペラと喋りだしたソル。その、あまりにもな内容に理解が遅れる。
「魔王を繋がっていた? それは、一体、どういう意味で言ってるんだ?」
「どういう意味も、そのままの意味です。実は私が、世界に広がる冒険者ギルドの権力を握ってしまいましてね。まぁ、スキャンダルですよ。公開した世界中のギルドマスターたちが処刑されるレベルのスキャンダルを思いも寄らない所から入手しましてね……それはまぁ、機会があればお教えしますよ。面白いですよ? 人知れず世界を動かすのは」
「――――ッ!?」とベルトは二の句が継げない状態に陥った。
ベルトがソルに対して思っていた印象は、胡散臭い若者。
裏で何をしてもおかしくはないと思っていたが――――
「想像以上の傑物だったな。お前……」
「いやぁ、ベルトさんに言われるとお世辞や皮肉でも照れますね」
「本心さ」とベルトは付け加えた。
「それで? 魔王を繋がっていた? それはいいさ。魔族と人間で商売している例は沢山見てきたからな。……それで、魔王は今?」
「行方不明ですね。でも、最後に挨拶に来ましたよ」
「挨拶?」
「おそらく、メイルさんに腹を撃ち抜かれた直後でしょね。 世界を終わりを見せれなくなったって言ってましたよ」
「世界の終わり? ……いや、待てよ。それは……結局、魔王の目的はなんだったんだ?」
「人類を滅亡させ、世界を崩壊させたい。そう言ってましたよ。子供のように目を輝かせてね」
「……意味がわからない」
「破滅主義者だったのでしょ。ただ、彼……いや、彼女だったのか、最後まで私には性別を教えてくれませんでしたが……魔王には、それを実現させる力があったという事です」
「世界を崩壊させるだけの力……か」
「えぇ、実際に魔族は滅亡直前でしょ? あれはワザと魔族の力を削いで、滅亡直前までに追い込んだのですよ」
「ワザと? それこそ、なんのために?」
「人類と同じですよ。人類を滅ぼす。魔族も滅ぼす。それが楽しい娯楽。ただ、なんとなく魔族の方が早く滅ぼせそうだったから優先させた。それだけだそうですよ」
「……」とベルトは無言だった。 もう、自分が笑っているのか泣いているのかわからない。
自分の理解をこえてい話。 それで……そんな事に自分は……自分たちは……
そんなベルトの様子をどう思ったのだろうか? ソルは――――
「最後に遺言が告げられてよかったです」と笑った。
「遺言?」
「えぇ、出頭します。よくて終身刑……まぁ、裁判すら受けさせてくれないかもしれませんがね」
「なぜ、誰にも言わなければお前の罪はわからないはずだろ?」
「そうですね……私も楽しみだったんですよ。 世界の終わりが」
「……」
「それが見えなくなるとね。破滅主義者は世界の破滅が見えなくなると、最後には自分を破滅させたくなるんですよ」
その時、ソルが見せた表情にベルトはここ数年間、抜け落ちていた恐怖を思い出した。
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