第145話 呪詛喰い



 「なぜ、お姫さま抱っこなんだ!」


 困惑した魔王の声。 しかし、ベルトもメイルも気にしていない。



 「≪死の付加デス・エンチャント≫……冥王襲名バージョン」



 ベルトは冥王の力を発動する。


 体を黒い靄のような物が包み込み、変身が始まる。……そのはずだった。



「圧縮!」とベルトの言葉に反応して靄は、ベルトの体内に吸収されていく。


 冥界にてハーデスを打ち破り、心臓を食べて得た力。


 その力が再び心臓の形を取り戻し、ベルトの心臓と入れ替わっていく。


 その心臓は、冥王の濃厚な魔力が血液と混じり体内へ巡回していく。


「まずは、あの力を十全に使うための魔力を全身に通す。コントロールは頼む」


メイルは黙って頷く。 ベルトの首に回した両手に破邪の力を送り込んだ。


その様子に危ういものを魔王は感じる。


「何をするつもりかわからぬが……危ういな」


かつて、自分を殺すために身に着けた冥王の力。


それだけでも危険すぎる。 だが、ベルトが行うとしているのは、冥王の力を利用して、まだ上の領域に至ること……


聖女を抱きかかえているのは、その力のコントロールさせ暴走を防ぐためだろう。


そこまで推測した魔王は――――


「ならば先手必勝よ」


声がしたのベルトの背後から。瞬間移動や超スピードなんてものではない。


なぜなら、今も魔王はベルトの正面にいる。 背後に出現したのは魔王の分身。


分身と言っても、その能力は本体と同等。 常人ならば認識すら許さぬ速度で手刀。


だが、背後からの攻撃にも関わらずベルトには届かない。


ベルトの体が舞い上がる。


その動きは優雅であり、攻撃を行った魔王も「なぜ避けれるのか?」と困惑する。


そのままベルトは後方へ宙返りを決め、困惑したままの魔王の頭部に蹴りを放った。


その攻撃はサッカーで言うところの



オーバーヘッドキック


もちろん、メイルを抱きかかえた状態での蹴りだ。


その一撃で魔王の分身は消滅する。


「私の分身が一撃で? 何をした? ベルト?」


「今の俺に不意打ちは利かない。 なんせ、お前と俺は体が繋がっているからな」



ベルトは右腕を見せる。 そこには魔王自身が埋め込んだ『呪詛』が黒く輝いていた。



「そうか。そうなのですか。あなた、何かしましたね――――いや、しでかしたのですね。 教会と聖女を味方につけながら、今まで解呪をしなかったのそれを行うため」



「あぁ、これがお前の力でお前を打倒するための力――――『呪詛喰いカーズ・イーター』だ」



呪詛はベルトの右腕を覆っている。 黒く具現化されたそれは酷く禍々しく見える。


「これは、とんでもなく滑稽だね。 自身の呪いを強めて力に変えたのかい。それほどまでに、この魔王の首がほしかったのか?」


「いや、単純に呪いをかけた者への報いは呪いを返す事だろ。 それに呪詛を打ち返されれば、お前の体はもたないだろ?」


「――――ッ! 気がついていましたか」


「あぁ、返してもらうぞ……勇者カムイをな!」



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