第143話 魔王の屋敷


 「こちらが新しい魔王さまの屋敷になります。では――――」


 「いや、もうお前はいい」


 「いや? 何を言ってるんですか? もしかして、ここでバトル開始ってつもりじゃないですよね?」


ヘルマンは余裕の表情だ。 その理由もなんとなくわかっている。



「どうして僕が四天王で最後に残ったと思います? それは貴方対策に改造されていたからなんですよ」


「……俺対策だと?」


「おや? 一瞬だけ動揺しましたね? そうなんですよ。僕にはあらゆる毒物への耐性を有しているのですよ」


「そうか。だが、既にお前の攻撃は終了している」



「何を……」と彼は最後まで言えず言葉を止めた。


その直後に喉を押さえ、そのまま前のめり取れた。 



「やれやれ、あまりにもお喋りだからヒヤヒヤしたぜ。もしもお前が注意深い奴なら舌の麻痺から気づかれる可能背もあったからな」


「なにを言って……まさか無言だったのは、そのため……だが、いつの間に毒を…いや、耐性を無効化?」


「既存の毒に耐性があるなら、新しい未知の毒を造って打ち込んだ」


「なっ! そんな……馬鹿な…」


新しい毒と言っても既存の毒を複数混ぜただけだ。 相乗効果という奴で毒の効果が増幅しているだけだが、そこまで教えてやる義理はない。


「ここでお前は再起不能だ。今後、激しく体を動かすたびに激痛に襲われるだろう」


「そんな最後に、最後の1人の僕が……戦わずに…終わ……」


 ヘルマンは、そのまま意識を失った。



「まぁ、案内してくれた礼だけは言っておく」



それだけ言ってベルトは屋敷の門を開いた。



・ ・ ・


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「随分と暗いですね」とメイル。


彼女は警戒を強めて、周囲を見渡す。


その動きから緊張感が伝わってきた。



「大丈夫だ、メイル。魔王退治は慣れている。これで2回目だ」



場を和ませるためのジョークだったが、彼女はキョトンとした表情になっていた。



「ふん、随分と余裕だな。こっちは退治され慣れているのだ。そう簡単にはいかんぞ」



 魔王の声。それと同時に屋敷に光が灯る。


 姿を現した魔王。……それともう1人魔王の背に隠れて誰かがいる。


 それは女性。魔族ではなく、人間。そして、ベルトのよく知る女性であった。


 「どうして、こんな所に……なんて言わないぞ。 こんな場所に魔王がのうのうと屋敷に暮らしている時点でお前が手回ししていたのは想像していた」


彼女はかつての仲間だった。


そして、魔王を国内で暮らせるように手の回せるような人間。


魔王の亡命を可能にするほど国政に関わるような女性をベルトは1人しか知らない。


彼女の名前は――――



マシロ・アイフェ



彼女はこの国の姫君。 


勇者パーティとしてベルトたちと冒険を繰り広げた仲間の1人だった。

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