第133話 その技名が戦場に轟いた


 ノリスが見上げた上空。


 そこには飛行船が浮かんでいた。


 無論、ただの飛行船ではない。 


 魔法などの索敵に反応しない特殊素材。 地上の状態を正確に把握できる索敵能力。


 そして、精密な自動運転。


 それらによって、飛行船は竜王ゾンビの真上に停止。さらに地上の竜王ゾンビの動きに合わせて微調整すらしている。


 そんな中、不安な表情を浮かべているのはメイルだった。


 

 「あの……本当にここから飛び降りんですか?」


 

 彼女の問いかけに、誰もが笑顔の表情だけで答える。


 「さて、そろそろ先行したノリスが聖樹の結界を作動させた頃だ。いくぞ」


 ベルトはメイルの腰を掴んで――――


 「えっ? ちょ、ちょっとベルト義兄さん?」


 なぜか動きを止めたメイルを紐で縛った。


 「よし」と紐の強度を確かめるように強く引いた。


 そのままメイルを背負った。 加えて、これでもかと密着するように自分の体にメイルを縛り上げる。


 「こ、これは……私はいけない子です。こんな戦いの前に……恐怖よりも多くの多幸感を分泌するなんて!」


 「何を言っているんだ? メイル?」とベルトは眉を曇らせた。


 それから飛び降りた。


 ・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・・・・


 この世界に存在している山脈よりも遥かに高み。


 尋常ではない冷気と風圧は生身で耐えれるわけはない。 魔王軍に気づかれない最小の魔力で防御壁を張り、先ほどのノリスと同様に頭から落下していくベルトとメイル。


 

「やっぱり、やっぱり無理です。もう無理です。降ろしてください。死んでしまいます」


 絶叫混じりのメイルに対してベルトは「……いや、降ろしても変わらないぞ?」と冷静だった。


 「そんな事よりも、そろそろ肉眼で敵影が見えてくるぞ」


 「見えません! 体の穴から液体が止まらなくて目が、視線がありません!」


 「……そうか。それは良いが、例の件は頼むぞ?」


 「はい、わかりました!」


 そういうとメイルは地上に向けて手をかざし――――



  ≪真実の弾丸≫



 「こうなったら全弾売り尽くしですよ!」


 地上の竜王ゾンビを含め、周辺の魔物に向って破邪の弾丸を一気に放射させた。


 流星の如く降り注ぐメイルの攻撃は魔王軍に甚大な被害を与え――――


 さらに一際大きな流れ星――――否。ベルトとメイルは竜王ゾンビの頭上に落下していった。


 そして――――



 ≪致命的な一撃≫



 その技


名が戦場に轟いた。

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