第127話 幕間③ 光の結界


 5日目、夜が来る。


 いつもと変わらない夜――――否。変わらなさ過ぎる。


 深々と耳に痛みさすら感じられる静けさ。


 夜行性の生物ですら寝入ってしまっているのではないか? 


 そんなあり得ない疑問ですら脳裏に過ぎる。


 不気味。 それ以外の表現を許さぬと言っているかのような……


 言っている? だれが?


 ――――それは来た。


 怪人は何者かが定めたかのように規則正しさを有している。


 規則正しく、卑俗な笑いを聞かせ――――


 規則正しく、脾肉が纏わりついたような体を揺らせる。


 予定調和。 


 ならば、誰の予定なのか?


 怪人に相対するのは少年と少女。2人の冒険者である。


 2人の存在に気づいた怪人は不満げな唸り声をあげて襲いかかってくる。


 静けさは金属の接触音によって切り裂かれた。


 怪人の斧を少年の長剣が受けた。


 拮抗するのは一瞬、体格差。とくに体重は2倍はある。


 軽い体重の少年は耐え切れず膝を地面に着く。


 「ぬぐっ……」と呻き声が少年から漏れる。


 動けなくなった少年を怪人は蹴りと叩き込め、後方へ弾き飛ばした。


 勝利を確信したのかだろうか? 怪人は普段通りに「げふげふげふ……」と笑い声を上げる。


 しかし、普段通りではない。 今までの―――― 昨日まで繰り返されてきた攻防と違っている。


 だからこそ、油断とも言える致命的な一撃と少年を受けたのだ。



(こいつ記憶を失っていない? いや、違う。……ここに来て成長してやがる!)

 


 ダメージは特大。 意識の手綱を手放しかけながらも少年は立ち上がり剣を構えなおした。


 痛みは全身に回り、体は鉛のように重さを感じる。


 それを怪人はどう認識しているのか、仮面代わりの袋で隠されて表情は見えぬが……


 怪人は動いた。 その巨体には似つかわしくない鋭さと敏捷性を秘めた一撃。



 (避けるぬ。そして、受けれぬ!)



 少年には選択肢はなかった。だが――――



  ≪真実の弾丸≫



 少女――――メイルの魔法が怪人の頭部に直撃した。


 怪人は仰け反り、攻撃の手を止めた。



「ここだ!」



 少年をその隙を見逃ささない。 


 地面に転がるような動き。低い体勢での剣戟は怪人の膝を狙う。


 1度 2度 3度


 膝の内部に侵入させた剣先を左右へ走らせ、ズタズタに切り裂いた。


 巨樹を斧で切り倒したかのように怪人が叫び声をあげて倒れていく。


 だが、ただではやられないと言わんばかりに少年の頭部を掴んだ。


 そのまま潰すつもりか? 体重を浴びせかかる。


 ――――その瞬間だった。


 少年には何が起きたのかわからなかった。 ただ、視線の隅でメイルが杖で地面を戦いのが見えた。


メイルの足元に閃光が走りぬけた。


足元だけではない。周囲は光が包み込まれた。


変化はそれだけではなかった。少年が最初に気づいたのは――――



(――――圧力が消えた?)



少年を頭を押さえつけていたはずの怪人の力がなくなっていた。


眩い光の中で何が起きたのかはわからない。 それがわかったのは光が消え去った後だった。

 

 

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