第126話 幕間③ 繰り返される日々
「げふげふげふ……」
今宵も品の無い笑い声を出しながら怪人が現れた。
「また今日も現れたな」とため息混じりに言ったのは迎え撃つ少年だった。
少年の言葉の意味を理解できないのか、怪人は「げふ?」と首を傾げた。
決まった時間にメイルの寝室に忍び込んで、撃退される。
そして、捕まえても、殺しても、記憶を消されて朝を向える。
少年とメイルがこれを繰り返して4日目だった。
4回目となれば慣れたもので怪人の斧は少年とメイルは軽々と避ける。
少年は兎も角、メイルも簡単に避けるのには理由がある。
怪人が振るう斧の軌道。それが毎回変わらず同じなのだ。
まるで予定調和のような斧捌き。 今の2人ならば、眼を閉じても避けれるだろう。
そのワンパターンの攻撃にも関わらず、怪人は「なぜ当たらぬか?」と言ってるように苛立ちを隠せずにいた。
「メイル、お前の予測どおりだ。こいつ自身、俺たちを毎日欠かさずに襲っている記憶がないみたいだな」
「……」とメイルは黙って頷いた。
確かに怪人の斧は易々と避けれる。しかし、それがコチラの油断を誘っている作戦とも限らない。
戦いの最中で油断はしない。 それは、ある意味では自分の師匠でもあるベルト義兄の教えだとメイルは信じている。
「そろそろ、トドメをさすぞ?」と少年はメイルに確認してくる。
「はい」とメイルは短く返事をした。
閃光が煌くような太刀筋は空中で線を描き、その首を落とした。
すると日夜は逆転したかのように暗闇が消え去った。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
1日目の夜は捕縛。
2日目は逃がして尾行。
3日目は殺害。
それぞれを試してみたが、変化は訪れなかった。
そして4日目。 今日も朝を向えて「あらら、今日も仲が良いのね」と修道女はクスクスと笑いながら、メイルを起こしに来て、そのまま去って行った。
少年の案で怪人に襲われるよりも早く修道女の身柄を確保しようとした事もあったが、期待していたような変化は現れなかった。
「それで、この状況を打破するために昼間にこそこそやっているが……勝算はどのくらいあるんだ?」
この数日間、昼間の聞き込みを止め、メイルは何かの下準備に入っている。
少年は、その事を尋ねたのだ。
「えぇ、今日で準備は終わります。もしも、私の考えが正しいのなら、これで変化が訪れるはずです」
「そうか……まぁ、期待はしておくさ」と少年は自分よりも年上であるはずのメイルの頭は撫でた。
「ちょ……ちょっと! な、なにをするんですか! 私の方がお姉ちゃんなんですよ!」
薄っすらと瞳に涙を溜めて抗議するメイルを少年は笑った。
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