第125話 幕間③ メイルの思考


 教会を出たメイルと少年。2人の顔は険しかった。

 


 「あの修道女についてどう思う?」



 不意にかけられた言葉にメイルはピクリと肩を震わせた。

 

 だが、少年はそれに気づかないように言葉を繋げる。


  

 「俺には記憶の欠如がある。修道女の仕事がどうのようなものかわからぬ。 しかし、教会側の人間であるメイルならわかるだろう……」


 それから少年は尋ねた。 


 

 「あれは本物の修道女か?」


 「はい……仕事は間違いなく……何者かが修道女のふりをしているという事はありません」



 「そうか」と少年は短く答える。



 「貴方は修道女と怪人が繋がっていると考えているのですか?」



 「繋がっているというよりもおそらく……記憶を消失させる力があるのは修道女の方だろうな」

 

 「え?」


 「もしもあの怪人に記憶を奪うような能力があるなら、攻撃を繰り出すと同時に記憶を奪ってこようとするはずだ。そうすれば、攻撃の一撃一撃が奇襲となり対峙する者は対処できなくなるだろう。だが、奴はやらなかった」


 「……だからと言って、あの修道女さんが共犯者と考えるのは早計だと思います。何か……その……怪人が記憶を奪うのには条件があるかもしれまん。それに、彼女が戦闘中の私たちの様子を見に来なかったのは、私たちよりも早く怪人に襲われ、修道女さんは捕まって記憶を消されたのかもしれません」


 「前者は考える余地はある。しかし、後者にはない」


 「それはどうしてですか?」


 「簡単な事だ。俺たちよりも早く修道女が襲われ、捕まっていたのならば、俺たちが怪人を捕まえた後、あの怪人は俺たちから記憶を奪い……それから修道女の記憶を奪ってから逃げたという事になるからだ」



 「それは……えっと……」とメイルは言葉を詰まらせた。


 徐々に頭での処理が追いつかなくなってきたのだ。


 「……そうだな。整理してみるか」と少年はメイルに聞かせるように呟いた。



 「まずは、俺たちは記憶を失う攻撃を受けている。これは、間違いないな?」

 

 「いえ、前提として攻撃とはかぎりません。方法がわからない以上、他の狙いがあって、その副産物的に記憶が失っている可能性……」



 「まずは、俺たちは記憶を失う攻撃を受けている。これは、間違いないな?」と少年は、少し声を大きくして、先ほどと同じ言葉を発した。


 「……はい」と答えたメイルは頬を膨らませて抗議の意思を示した。

 

 しかし、その抗議を少年は無視した。



 「では、攻撃している者……俺たちや村人の記憶を奪った犯人は何者か?」 

 

 「貴方の説では教会の修道女さんが怪しい……と。それから謎の怪人ですね」


 「現時点では、その2名だ。情報が少なすぎて他の可能性がないとも言えないが……」


 「どうして、私が狙われたのでしょうか?」



 「ん? それは……」と少年は言いよどむ。


 おそらく、この村の調査として依頼を受けた冒険者だからだ。


 つまり、この騒動を起こした者にとってメイルは明確な邪魔者。排除しようとするのは当然とも言える。


 しかし、少年がそれらを口にするよりもは早くメイルは話を続けた。



 「どうして私だけ記憶の欠如が少ないのでしょうか?」



 「……」と少年は、メイルの言葉を吟味する。


 村の滞在期間が短いため? それでメイルが納得するとも思えない。



 「もしかしたら、私には怪人に襲われる理由があるのでは……いえ、もしかしたら、記憶の欠如が少ないから襲われた? それとも……私の記憶を奪うのが目的で襲われている?」



 メイルは思考を続ける。


 少なすぎる情報。 これだけでは、答えにたどり着けないと分かっていながらも、それでも真実に手を伸ばすようにメイルは思考を続けた。



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