第115話 ベルトの苦戦 質量こそパワー!?


 「どこへ行ったのですかね? ダメです。全然ダメですよ」


 ルークはぎゃははと笑う。

 異形の肉体に精神が引っ張られたのか。それとも、元から素がこれだったのだろうか?

 

 人ならざる者の笑い声だった。


 「このダンジョンは私の血管のようなもの、とてもとても逃げられたもんじゃありません。それに周辺に潜んでいるアンデッドたちは私の配下。血を対価に不死身の報酬を与えた者たちから伝わってくるのですよ。あなたたちの無様の敗走がね!」


「そうかよ」


 突然、ベルトが目前に姿を現した。それも普段通りに飄々とした様子で。


「――――ッッッ!?」


「どうした? 俺を探していたんだろ?」


 ルークの爆上がりしたテンションは一瞬で落下。冷静さを取り戻し、分析を開始する。


(ここで姿を現したのは罠の可能性が高い。しかし、ただの狭い通路にしか見えない)


 わからない。だからルークは普通に問う事にした。


「ここで姿を現したということは何か、しかけていますね?」


「言うと思うかい? それに単純に投降


を言いたいだけかもしれないぜ?」


「あっ……それ良いですね。是非とも貴方の口から惨めな命乞いを聞きたいものです」


「そうかい? あんたほど長生きじゃないが俺もいろいろな経験をしてきた。だが命乞いは初めてだ。とても楽しめたもんじゃないと思うぜ?」


「ぎゃははは……魔王軍に所属する者なら誰だって貴方の命乞いを熱望していますよ。できれば、魔王軍全員で共有してみたい最大の娯楽になるでしょうね」


「くっ……あっははははは……」

 

「ぎゃは……ぎゃははははは……」


 2人とも腹を抱えたように笑う。そして、どちらともなく――――


 笑いが止まった瞬間に最後の戦いが始まった。


 ・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・・・・


 

 ≪魂喰い≫


 ベルトの代名詞  ≪魂喰い≫がルークの巨体に直撃する。


 だが、ダメージを受けた様子がない。


「無駄ですよ。質量こそパワーでありタフネス! 重厚な我が肉体に攻撃なんて無駄なのですよ! 無駄無駄無駄……」


「――――ッッッ! だったら!」とベルトは一瞬で間合いを詰める。


 そのまま巨体に飛び乗ると


 ≪暗殺遂行≫


 ≪軽気功≫ 


 ≪速攻迅速≫


 ≪雷神化身≫ 


 ≪瞬刹駆≫


 ベルトは所有している移動系スキルを駆使して、ルークの体を走り抜ける。



 「狙いは――――」


 「狙いは私の頭部ですかね。所詮は小細工に過ぎませんが」


 そう言ってベルトのスピードについてきたのはルークだ。

 

 ……いや、正確には首無し騎士としての体に首を抱えられたルーク。

 

 ルークの本体が首なしゴーレムとするならば、それ以前に操っていた体はルークの分体とでも言えばいいだろうか? ――――兎に角だ。


 その動きに驚愕する。


 ベルトが持つ『単純戦闘なら世界最強』の肩書きを支えているの人類最速とも言える速度領域である。

 

 だが、ルークはベルトよりも速かった。

 

 ルークの蹴りをまともに受けたベルトは、そのままルーク本体の巨体から蹴り落された。 



 「自身の体を移動するのに他人より遅いわけがないですよ」



 落下しながらもベルトは「よくわからん理屈を!」と叫んだ。


 正真正銘の負け惜しみである。



 



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