第106話 叩き込まれた意思
アンデッドには脳がない。では、知性がないのかというと、そういうわけでもない。
生前の心残り、執念のような物がダンジョンで自然生成される魔力と混じり合う。
それが失われるはずの心を紡ぎ、アンデッドとアンデッドたらしめると考えられている。
ならば、この時の不死騎手の心象を言語化してみる。
ヒャッハー! 敵だ。敵がいる!
何者でもなかった俺。 冒険者として名を残そうと挑んだダンジョンで
目に触れるものに苛立ちを感じ、触れる物を傷つける。
まるで、尖ったナイフのように振る舞う毎日は死んじまった後も変わりゃしねぇ。
この死滅っけ……いや湿っけだらけのダンジョンでも、心は潤せねぇ。
けど、出会っちまったんだ。 この天使ってやつと!
ご機嫌で、いかした
それは耳のないアンデッドにも骨伝導で伝わってくる。
どんな生き物だって、こんな声で鳴けるやつはいねぇ。
どこへでも行けそうな気がするんだ。
コイツとなら、どこにだって一緒にな!
行こうぜ?
不死騎手が魔王軍から自動二輪車を与えられた理由は外敵の抹殺。
その理由ゆえに彼は―――彼と相棒はどこにも行けない。
けれども、彼は信じている。 自身の存在理由が魔王軍に無視できないほど、大きくならば自由に――――どこまでも自由になれるのだと……
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
ベルトの頭上に自動二輪車は落下してきた。
整備を何もされていないダンジョンの路面。
それを卓越した技術テクで走破しながら、荒れた地面をジャンプ台として利用する。
ジャックナイフターン。
ふわりと浮き上がった後輪を鈍器のように振り回す攻撃。
あるいは前輪を上げて体当たりを繰り返すウィリー走行。
ベルトにとって未知の攻撃。しかし、それも徐々に対応しつつあった。
(俺よりも直線上の動きは遥かに速い。旋回能力も悪くない。だが―――)
狙いを定める。 次の攻撃を躱すと同時に一撃狙い。
そして、それは来た。
≪
すれ違いざまにベルトの拳は自動二輪車に叩き込まれた。
瞬時にベルトへ送り込まれる自動二輪車の情報。
時代
それに混じって送られてくるの不死騎手の感情。
「これは……だったら!」とベルトは二撃目を叩き込む。
自動二輪車へ叩き込まれたのは破壊目的の攻撃ではない。
流れ込んできた感情と同様に自身の意思を拳に乗せて送り返したのだ。
ベルトはやろうとしていることは前代未聞の行いだ。
アンデッドとの
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