第73回『GAMBA ガンバと仲間たち』
【作品紹介】
テレビアニメ化された 「ガンバの冒険」 も人気を博した斎藤惇夫の児童文学を基にした劇場版アニメ。都会育ちのネズミのガンバが、ある島を恐怖に陥れる白イタチを倒す旅に出る。
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いやぁ、これいいね。
もちろん、昔のリメイク作品が一番文句言われる部分「オリジルとの比較」の部分で、確かに 「見る子どもにトラウマを与えかねない勢いの怖さのノロイが、マイルドになった」とか、「ずんぐり体系のガンバたちがやたらスマートに」とか、これはもう時代の流れだからしょうがない。
昔で言うと、銀河鉄道999の星野哲郎みたいな感じ。TV版のずんぐりもっさりキャラが、劇場版になってしゃっきりジャニーズ系少年に生まれ変わってしまった、みたいな。
あ、ジャニーズで思いだしたけど、元SMAPの中居君も、番組でこれ好きなアニメに挙げてたなぁ。
最恐の敵・ノロイの声を担当するのが、野村萬斎さん。
昔のノロイに比べると甘口だが、それでもなかなか味わいがある。
そうは言っても普通には怖かったりするので、幼児さんのご視聴には注意。
小学校1年以上なら、お子様の肝っ玉と相談の上。度胸がある子でも、未就学児(幼稚園、保育園)の子には、ちと厳しいでしょう。
ある平和な島が、イタチのノロイに征服される。
命からがら逃げてきた子ネズミが、助けを求める。
だが、ノロイの強さを知る皆は、勝てるわけがない、と誰も名乗りをあげない。
「そうだよね、無理なことお願いして御免なさい……」
意気地なし、と責められないほど、ノロイの悪魔的な強さは絶対だったのだ。
でもそこへ、たまたま居合わせた、都会から海を見たくて旅に来ていた「ガンバ」という街ネズミが、名乗りをあげた。その心意気に大事なことに気付かされた数人の仲間が改めて加わり、一同は「絶望」が待つ悪魔の島へ——。
冷静に考えたら、ノロイのことも海に住む者の事情も知らない「世間知らずな」ガンバが、ノロイ退治に名乗りをあげても、それを則「彼には勇気があって、他は意気地なしだった」という評価はできない。
言い方を変えたら、他の者は情報分析において「冷静」であって、ガンバは無謀すぎた。
「知らぬが仏」と言うがまさにそれで、人によっては(ネズミによっては?)ガンバがええかっこしいの偽善者に見えたかもしれない。どうせ、途中で「ダメだった」とか言って、泣いて帰ってくるんだろうさ——。
実際、彼は劇中で一度、「怖い」「無理かも」と絶望している。
映画なので立ち直って倒すが、でも現実だと置き換えて考えたら、そのままダメだった可能性だって考えられる。いや、そっちの方が映画より現実的だ。一度力勝負で負けた者が、気持ちが持ち直したからといって休憩もなしに戦闘で勝てるのは不自然である。
でも、私はこのガンバの映画は、そのままでいいと思った。
その、突っ込みどころ満載(萬斎さん出てるだけに?w)でいい。
私なりに、この映画のキモだと思った学びは——
●初心こそが、ものを言う。
あとは、それを守り抜くだけである。
途中の困難は、その都度当たればいい。
とにかく、最初の起爆力・爆発力が重要である。
『走れメロス』という、太宰治の有名な文学作品がある。
冒頭には、いきなり「メロスは激怒した。」と書かれてある。
そう。激怒した、のだ。その気持ちに従い、メロスは友人を救うため理不尽な王との賭けに身を投じていく。もちろん、途中には困難が降りかかり、自分の正しさや気持ちを疑う試練にもさらされる。勢いに任せた計算不足の感も否めない。
でも、メロスは走り抜いた。
それを支えたのは、スタート時の爆発力である。
それが、最後のゴールまで推進力を維持してくれた。
ガンバも、難しい事情やノロイと戦うのがいかに無謀かということを考えるより、「こんなことを、どうしようもないと認めて泣いていないといけない世界なんて、イヤだ」という怒りが勝ったのだ。こういう時冷静な人間には、まずその気持ちは理解できないだろう。
そいつは計算のできない、無謀なだけのバカなんではなく、「命を懸けてでも、本当に大事なものが大事にされないことをゆるすことができない」だけなのだ。
だから、何事においても、最初の「気持ち」を見つめると、いいことあるよ。
出発点。原点。きっかけ。
もちろん、途中経過での踏ん張りや努力でも、成功は左右されるだろう。
でも、決定的に多くを占めるのは、はっきりスタート時の爆発力である。
そこが、勝負を決めてしまうことも少なくないほどだ。
他人に、どんなことを言われてもいいではないか。
あなたが、最初の地点において 「こうしよう、こう生きよう」 と思った原点。
そこがまだ熱を持っていて熱いなら、何を恐れることがある?
もちろん、試練も荒波も来るだろう。時々、怖くなったり弱気になることもあるだろう。でも、その最初の爆発力と共に進むなら大丈夫。
ガンバも、理不尽に虐げられた者を助けたいという気持ちにおいて偽りがなく、あっぱれであったから最後まで頑張り通せた。メロスも、最初の「激怒」が本物であったからこそ、無謀であったとはいえ貫き通せた。
この二者に共通するのは、現実的には「無謀」と言えた点。
でも、気持ちさえ勝れば、その無謀に関してはあとあと考えていけば何とかなる。
気持ちよりも、「こうだからこう」を優先させすぎると——
あなたの人生の推進力は、山口さんちのツトム君の三輪車並みになる
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