第67回『リアル鬼ごっこ(2015)』
「全国のJKの皆さん。
あなたがたはちょっとふてぶてしいので、少し数を減らすことにします——」
上記は、園子温監督の映画、『リアル鬼ごっこ』の宣伝キャッチである。
もうここですでに、ひとつの「ふるい落とし」が行われている。
キレイ系純スピリチュアル信奉者は、まず最初から見ないであろう。
この世界は愛と赦しでなくてはならず、そしてすべてが幸せになるのでなければならず……もう、理不尽におもちゃか何かのように人命が軽く扱われるお話な時点で、縁のない映画であろう。
実はこの映画、すごい映画なのだ。
●この映画のすごいところは——
この宇宙の存在するわけ、そしてその仕組み(運営システム)と成り立ち
この幻想世界の見破り方と、その脱出方法 (悟り)
そういった、すべてのことを説明しているところ。
時代に早すぎるので、エログロB級作品に「擬態」して、世間の目を欺いている……のかもしれない。(笑)
時代的には、登場がまだ早すぎ、そのメッセージに気付ける人は少ない。
だから、わざと全体として「くだらなくする」という粉飾をしてるのでは、と思うほど。そうすると、「無駄な人が寄りつかない」という利点がある。
この作品は、隠さずありのままを言えば、女子高生たちがわけの分からない「何か」の力によって、切り刻まれあるいは銃火器で吹っ飛ばされるかして、理不尽にどんどん死んでいく、というものである。
なぜか、主人公だけはどんな窮地でもひとりだけ助かり続けるのだが、その理由は最後に明らかになる。そこまで映画が進むと、大概の人は自分の経験や認識力の範囲で意味を理解しようとし、しまいめにあきらめる。「イカれた映画」ということにしておけば、エゴも安心。
もし私が5年前にこの映画を見ていたら、ただ軽蔑したであろう。
よくもこんなバカバカしい、くだらないものをお金をかけて作れるな、と。
作った者の精神性を疑っていただろう。
でも、今なら受け止められる。てか、すごいよこれ。
たとえ私の人気が下がっても(もう下がっているが)、こう叫びたい。
●園さん、ナイス!
これは、まさに宇宙の構造そのものを表現している。
あまりネタバレも良くないので、この作品の中の名セリフを3つほど挙げておく。
「この世界はシュールだ。でもシュールさに飲み込まれたら終わりだ。
シュールに負けるな! 戦え!」
「この世界では、主人公はお前になっているんだ。
だから、私が何をしても無駄なんだ。
あんたが決断しないとダメなんだよ!」
「……私で遊ぶな! (自分と自分の世界の創造主に対して)」
基本エログロなので、(そしてこの世の様相と同じでシュールなので)普通にはオススメできない映画である。エログロとホラーに耐性がないと、鑑賞はやめたほうがいい。
大丈夫。こんな映画を見なくても、それぞれのタイミングで悟る人は悟り、気付く人は気付きます。
何も、こんな「えげつない教材」を無理に使って気付く必要はない。
……にしてもだ。この映画は、実に見事だ。
くだらく見せることにはやたら成功しすぎたのか、映画館では客が私を含め2人でした。貸し切り状態記録、とはなりませんでしたとさ。
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