第41回『ジャッジ!』
【ストーリー】
世界的にも有数の広告祭に参加することになった新人広告マンが、自社CMのグランプリ獲得を目指して奔走するさまを描くコメディー。
主人公のダメ広告マンを妻夫木聡が、名字の読みが同じことからニセ夫婦として広告祭に参加する会社の同僚を、北川景子が演じる。
広告業界の裏側を知り尽くしたスタッフが描くストーリーに引き込まれる。
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いや~、これにはやられました。
私は、しょっちゅう映画館で映画を見る。
だがもちろん、上映されるものすべてを見るわけにはいかない。
最終的に、「これはビデオ出てからでいいか」と判断するものが出てくる。
この作品も、そんな判断をした中のひとつだった。
しかし、この作品がビデオ化してから見たのだが——
なにこれ!
めっちゃ面白いやん!
下っ端の広告マンが、上司の作ったできそこないのCMを押しつけられ、手直ししろと迫られる。土台自体がダメなので、どんなに手直しをしてもダメなものはダメ。
きつねうどんのCMにきつねを登場させ躍らせるのだが、上層部が「ネコにしろ」と言ってくる。
しかし、もう今更どうにもならない。全部を撮り直す時間も予算もない。
苦し紛れに、キツネに「ニャー」と鳴かせ、「これはネコです」という強引なテロップを加える。
こんなCM、ヒットするわけがない。
かくして、損な立場にある下っ端のダメ広告マンは、さらなる無理難題を上から吹っかけられる。
この見込みのないCMを、世界レベルの広告祭で入賞させろ、できなければクビ。
普通に考えれば、この男のクビは決まったようなものである。
しかし、この一見ダメに見える広告マンには、ひとつの武器があった。
それは、素直さと正直さ。いいものはいい、ダメなものはダメ、というその当たり前の感覚を、決して曲げない。
業界は、その素直さを曲げないと生きていけない世界。
力のある者がこれは黒だ、と言えば白も黒になる世界。
そんな中で正直さを押し通す主人公に逆風も吹くが、そのたびに味方が増える。
なぜなら、皆が本当に憧れているのは、不正をして利益を得ることではなく「本当にいいものを作っていこう」というプロの広告業者魂だったからである。
ダメ広告マンが、因習にまみれた広告祭の雰囲気をどんどん改革していく様が、見どころである。
美味しいものは、美味しい。まずいものはまずい。
(まぁ、多少趣味によって左右されるこの基準に絶対はないが)
本当に美味しいものだけを、人に薦めてください。
そうでなければ、人に薦めないでください。
これが、この映画の一番のメッセージ・ポイントだと思う。
でも、今の世これがなかなかできない。
思ったこと、感じたことを素直に言えないなんて、おかしな世になったものだ。
カネと権力があり、あなたの立場を左右する力を持っている者の言うことなら、人はたいがい聞くだろう。いいと思えなくても、「いいと言え」と言われたら言うだろう。明日も、あなたのメシの種が無事であるために。
確かに、それであなたの生活は守られるかもしれない。
一時の安定は得られるかもしれない。
しかし、もっと長い目で見た時の「あなたのトータルの生き様」において、誇れるのかという部分。その人生に終わりが来た時に、後悔がないか。
もちろん、どっちがいい悪いの話ではない。長いものに巻かれて終わる人生も、ひとつの体験のバリエーションであり、それはそれで貴重なコレクションにはなる。
ただ、同じ生きるからには、この世ゲームを上手くやる、という点においては物足りないことは否めない。
魂のオーダーに素直に耳を傾ける者の人生に、後悔の二文字はない。
その境地に行けば、結果の成否で後悔などしない。
そういう者は、後悔の代わりに「納得」をする。「受け入れ」ができる。
もちろんだが、自分に受け入れやすい良い結果だけを「納得」「受け入れ」できる、という幼い段階ではない。失敗しても、認めてもらえなくても後悔しない。
そういう『在り方』を教えてくれる、本当に素敵な映画である。
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