第40回『RUBBER(ラバー)』
【ストーリ】
念力で人間を殺して回るタイヤを描いた、2010年のフランスのコメディ・ホラー映画。
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いやはや、とんでもない映画を見てしまった。
映画好きの私は、たいがいの映画は見てるので、見たい映画よりも見ていない映画を探すことになることも、ままある。で、選んでしまった映画が……
『RUBBER(ラバー)』というタイトルの映画である。ラバーとは、まんまゴムという意味。つまりは、車のタイヤのことである。
ストーリは一言で言うと、車のタイヤが突然意志を持ったように動き出し、人を殺しまくる、というもの。
ただ、それだけ。
起承転結とか伏線の回収とか、筋道だった構成はない。
ただ、理由もなく、タイヤが人を殺してまわるだけ。
まず、タイヤが勝手に動き出し、まずは虫や動物、空き缶などから踏み潰して回るのだが、なぜ空き地に捨てられたタイヤに意志が宿ったのか、という背景や説明がまったくされない。
されないまま話は進み、タイヤの魔の手はモノや動物から人間へと移る。
タイヤだから踏み潰して殺したりぶつかって殺すのかと思いきや、超能力で頭部を吹っ飛ばす殺害方法。この辺がグロいので、見る人を選ぶかもしれない。
当然、なぜタイヤがそんな殺害方法をするのかも、納得材料はなし。
ある人間の集団が、バードウォッチングのように双眼鏡でタイヤの動きを観察しているのだが、彼らがどういういきさつで、なぜそんなことをしているかの説明も、やはりゼロ。
殺人タイヤは、単なる機械的な殺人マシーンかと思いきや、美人の姉ちゃんのことを好きになったのか、殺さずに追い回す。へんなところで人間的だが、その辺も背景描写や理由説明がまったくない。
そしてこのタイヤ、ホテルに入り込んでベッドで寝たり、TVを見たり——
挙句の果ては、バスルームでシャワーを浴びたりしている。
意味説明は一切ないので、見ている方はボケーッと受け入れて見るか、勇気を出してTVのスイッチを切るかしかない。
最後は保安官によって退治されるが、なぜあんな無敵のタイヤに簡単に勝てるのかも説明なし。エンディングも、丸投げ。あとは勝手に考えろ! 的な突き放し。
本当に、最後までまったく意味不明。
それも、そのはず。
この映画のコンセプト自体が——
人生で起こることのすべてに、意味はない
……ということを描きたいがための映画だったからだ。
また、つまらぬ映画を見てしまった……(石川五右衛門調に)が、思わず笑ってしまった。図らずも、私が著作でメッセージしていることの重大ポイントが——
●宇宙で起こることのすべてに、意味はない。
……ということだからだ。
この映画監督も、スピリチュアルとは違った角度からだろうが、そういう人生観に至った(偏見による勝手な推測)。
だから、意味の通りやストーリー運びがよく考え上げられたものばかりの既存の映画界に、問題提起をした形だ。映画界の当たり前、に殴り込みをかけた形だ。
意気込みは買うし、筆者としても「起こることのすべてに意味はない」ことには同意するが、だからと言ってこれはないだろう!
●すべてに意味がないことはその通りでも、そこに意味を付けていくことも大事。
意味がないそのままでは、大変見苦しい。
この映画は、そこが分かっていない。
意味のないところに意味を付けたものが、面白く、また価値がある。
意味がない、そのままの描写の羅列では——
例えば、ドレッシングのかかっていないサラダのようなもの。
(かけない、野菜の味だけのほうがいい人もいるという突っ込みはなしで)
この世界には、真白な画用紙に絵を書きに来た。
好きな色を付けに来た。
ストーリーをつけにきた。
この世は、何の意味もない白い画用紙なんですよ~ということを訴えるために白いままにしておいても、何も面白くない。それをやっちゃったのが、この映画である。
だから、この映画を見ての、私からのまともな感想は、ただひとつ。
●皆さん、意味づけ上手になりましょうね。
この映画のような、下手に人生に意味がないということを意識しすぎた 「下手な意味づけ」 にならないように、生きていただきたい。この場合、映画の作り手がしていることは、少々ひねくれてはいてるが 『意味づけをしない、という名の意味づけ』なのである。
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