第35回『キカイダー REBOOT』
あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全な者となりなさい。
マタイによる福音書 5章48節
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機械とは、本来プログラムされたことを忠実に行う。
確実、かつ速やかに。
それができないと、機械とは言えない。
ましてや、自らの感情で躊躇するなど、それはもはや機械とは呼べない——。
アンドロイド(人造人間)としてつくられたジロー(キカイダー)。
生身の人間よりはるかに高い能力をもつこの存在が、軍事利用され殺人マシーンとなることを恐れた光明寺博士は、試作第一号となるジローに『良心回路』なるものを組み込んだ。
その後別の博士(後に敵になるプロフェッサー・ギル)に作られた第二号、マリ(ビジンダー)には良心回路がなく、情け容赦ない分戦闘能力においてジローを上回る。マリに 「あなたは機械としては中途半端で不完全な失敗作」と機械的な皮肉を言われ続け、自分でも「オレは不完全だ」と自虐的に悩むようになる。
何かを守りながら戦う、というハンデ。
「生きている者をむやみに傷つけてはいけない」という自制心。
そういうものがない敵との交戦において、疲弊するジロー。
機械でありながらもジレンマに悩む彼に、ある人物がこう言う。
●完全、って何だ?
我々が当たり前のように使っている意味で、本当にいいのかな?
実は、私たちが完全と呼ぶことは実は本当の完全ではなく——
「不完全」と呼ぶものこそ、そのままのあり方こそ「完全」なんじゃないかな?
我々は、完全とはいわゆる何も問題がない状態、最高の状態で、隙がない様を考える。平たい話、それが「最高に良いこと」だと思っている。
だから、人はその高みを目指す。
それが良いことと信じて。
そのためには、何かを犠牲にすることさえ厭わない。
でも、待って欲しい。
「完全」 がいいものだと、一体誰が決めた?
そういえば、誰も決めていない。
それが間違っていたとしたら?
正しい、と盲信するからこそ躊躇なくとことんまでやれる。
それが実は目指す必要のない、大して価値もないものだと分かれば?
バカバカしくなって、誰も「完全」など目指さなくなるだろう。
この記事の最初に、聖書の言葉を挙げた。
イエスが言ったとされる言葉である。
これを文字通りに受け取ったら、皆さん暗澹たる気分になるはずだ。
あ~あ、そりゃ大変な課題だなぁ。イエス様はいいかもしれないけど、オレじゃなぁ~いつになることやら。輪廻何回分要るかな?(何万回!?)
でも、安心していい。
●ここでイエスが意図する完全は、一般的な意味とは違う。
パーフェクトを意味する完全ではなく、「今ここの、そのままのあなたの状態」そのものを言うのだ。
あなたがテストで0点を取ったシーンであっても。ゴミを少し遠くのゴミ箱に投げたが、入らない上にそれがゴミ箱をこかし、中身が外にぶちまけられたとしても。
状況のこの世的評価と関係なく、そのこと自体が「完全」なのである。
良く使われる言葉では、「ありのまま」ってやつである。
だからホラ。完全なんか目指さなくても、今すでにあなたは「完全」なわけですよ。すでに完全なんだから、何かを目指してさらに努力するのも、自分のスキルを上げていくのも「趣味」の問題であって、必須ではない。
ジローは、完全なのだ。
この物語目線で語れば、良心や感情があるジローこそが完全で、完全な機械として命令のみを遂行するマリやハカイダーは機械としては完璧・優秀でも「不完全」。
でも、スピリチュアル的(悟り的)お話でいくと、ジローもマリもハカイダーも、同価値。単に脚本における、役割分担の違い。
だから、どれも 「完全」 。
何かが、何かとしてただ 「在る」。
もう、それだけで完全なのだ。
ただ、もっと「在る」ことを面白くするために——
向上心、という名の情熱がある。
それを使っても使わずとも、あなたの価値は保証されている。
しかし、強制されなくてもあなたは、それを使わずにはいられないだろう。
なぜならあなたは、「神」というスペックをもっているから。
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