第21回『陽だまりの彼女』

●陽だまりの彼女 (出演:松本潤・上野樹里 他)



 これは、単にラブストーリーというよりも、ファンタジーでありSFでもある。

 または、『怖くないウルトラQ』という感じ。(若い世代の人、ゴメンナサイ)

 かつて、いじめられっ子で浮いていた同級生の女の子(上野樹里)と、大人になってから偶然再開を果たした青年(松本潤)が、魅力的に成長した彼女と恋に落ちる。心を通わせ合った二人は、結婚まで行きつく。

 幸せな暮らしを始めた二人だったが、幸せな時間がそのまま流れてくれることを、ある事情が許さなかった。なぜなら、彼女の正体は……〇〇だったからだ。



 これは、超絶ネタバレ禁止映画だと思うので、もちろん彼女の正体は言わない。

(のどからエイリアンが出てくるほど、言いたい!)

 勘の良すぎる人は、映画始まってすぐ気付く。普通に勘の良い人は、中盤気付く。

 分からない人は、後半でこれでもか! っていうくらい動かぬ証拠が出そろって、やっと「ああ~」となるだろう。

 自分がどこで気付くか、を楽しむ見方もあるだろう。



 この映画に限らず、恋愛映画って、切ないものが多い。

 ケータイ小説と呼ばれる作品が原作の映画などは、まさに切なさが命。

 もう、芸能人は歯が命!っていうくらいに大事な要素である。



 もっと一緒にいたいのに、いられない。

 会いたいのに、会えない。

 なぜ、この世界は二人がずっと一緒にいることを許してくれないの?

 なぜ、別れなければいけない時がくるの?



 目覚めていない魂からすれば、この世界は「理不尽」に満ちている。

 起こってほしくないことが、起こる。そんな世界。

 私も、「切なさ」をこの映画から十分に受け取った。

 でも、魂のある部分はこう叫んでいる。



●有限だから、いいんだ。

 終わりが来るから、また始まるんだ。

 別れがあるから、まためぐりめぐって、別の出会い方もできるんだ。

 悲しみがあるから、喜びの価値も分かるんだ。



 ラストの、別れなければいけない二人の最後のやりとりが、グッとくる。

 確かに、自我(エゴ)は泣き、同情している。

 で、その事実がどうにもできない、という無力感。

 それがついには、二人を引き裂かざるを得ないようなこの世界に、やり場のない感情が行く。でも、どこかで私は喜び、感謝していた。

 


『切なさ』をありがとうー。

 辛いこともあるけれど、最高のプレゼントだよ。



 一元性の世界、「空」では絶対に味わえない気持ちである。

 この世界が限りあるもの、終わりが来るものであるからこそ、その限られた一瞬一瞬が、この上ないきらめきを持つ。

 最高の花を、その「今ここ」において咲かせるのである。

 それこそが、空が一番見たかったもの。

 我々というキャラクター(乗り物)を通じて、味わいたかったもの。

 もしこれが無限で、望みがそのごとく叶っちゃう世界だったら、このゲーム世界に来なくてよかったんだ。

 神が「思い通りにならない」ということを、体験しに来た。

 限りあるがゆえの「切なさ」を味わいに来た。

 例え有限でも、切なくても人は生きる。泥にまみれようが、不恰好だろうが、終わりが来ると分かっていながら全力で生きる。情熱を燃やして生きる。

 その感情エネルギーが尊いのだ。



 私たちは、二極のうちの片方を否定する生き方をしていることが多い。

 不幸を嫌い、幸福のみを肯定する。

 不快を嫌い、快のみを肯定する。

 欠乏・不足を嫌い、豊かさ(平たく言えば、金持ち)を肯定する。

 苦労を嫌い、楽を肯定する。(逆もある。苦労がいいことで、楽をしているやからはナマケモノという努力家の発想)

 宇宙は、陰陽含めそのすべてである。

 二極の片方を否定することは、宇宙全体を認めない、ということである。

 だから、片方を嫌っていい方を目指すのではなく、すべてをOKとしたうえで、あえて瞬間瞬間の選択を好きなようにしていくだけ。こうじゃないとイヤ、ではなく、どれもいいけどあえてこれが好き、と表明するだけ。



 別れがあるから。命にも恋にも、限界や終わりがあるものだから。

 だからこそ、この世界で営むすべてが輝くのだ。

 愛おしく思うのだ。

 確かに、神であることを忘れエゴを搭載した人間という乗り物は、苦い感情を味わう。でも、それすら私たちが「生きる」というゲームを支えてくれている立役者。

 だから、胸の内を、心臓をギュッとつかまれるような、あの切ない気持ち。

 ほろ苦さと同時に、もっと生きよう、もっと有限を楽しもう、という意欲も運んできてくれる。



 だから、私にとって「切なさ」は、大切な友達なのだ——。

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