第20回『そして父になる』

 私は、この作品が優れているとかそうでないとか、論評したいわけではない。

 主演の福山雅治にしても、内容自体にしても、感じ方は人それぞれ。

 好きな人もいれば、そうでない人もいるだろう。

 だから、ここで感じ方の同じ人にしかメリットのない文章を書くよりも——

 新時代へ向けてのメッセージ性となり得る部分、つまり人類の今までの古い在り方をあぶりだし、本当にこれでいい? もっと可能性はあるんじゃないの? と示唆してくれている部分に関して、私なりに映画から読み取ったことを紹介したい。



 以下に書くことは、決してそうしなさい、ということではない。

 そうしたほうがいいですよ、ですらない。

 したいですか? したくないですか? どちらでもいいですよ、ということ。

 さらに言えば、あなたがどちらかを選ぶ自由、干渉されない自由もあるけれど、他人にもそれがあることも忘れないでくださいね、ということ。



 この作品は、病院で起きた『赤ん坊の取り違え』事件をベースに——

 今まで育ててきた他人の子ども、血がつながっているけど今まで他人だった実の子を前に戸惑う二組の親。そして、いきなり事情も聴かされず大人の事情で「どこかのおじちゃん、おばちゃん」の家に交換される子どもたち。彼らの葛藤と、その結果たどり着いた新たな選択の可能性を描いている。

 ラストシーンは、人によっては物足りなく感じたかもしれない。え、それで終わり? みたいな。もうちょっと先まで描いてよ~! と思うかもしれない。

 それは、制作側の意図であり、わざとである。

 自分で考えろ、と言っているのである。

 最後のシーンの続きは、あなたが物語を紡ぐのだ。

 人の価値観によって、選択によって、無数のストーリーが生まれるのだ。

 あなただったら、どうしますか? 何がベストな選択だと思いますか?



 私なりに、ラストの続きを考えるなら、こうだ。



●二つの家族が、ひとつの家族になる。



 要するに、子どもには二人のお父さん・お母さんができることになる。

 今まで育ててくれたお父さん、お母さん。

 そして、自分を生んでくれたお父さん、お母さん。

 それで、万事解決。

 あとは、皆が幸せになることを阻む文化的慣習、という呪縛を捨てられるかどうかである。

 


 人類が今まで縛られてきた思考パターンは——



●AかBか。



 二者択一である。どちらか、なのである。

 どちらかを取れば、他方を捨てなければならない。

 それで、苦しみ悶えてきた世界がある。

 AかBか、の世界は本当に豊かな世界の概念ではない。

 では、新時代のスタンダードとなる「豊穣からくる発想」はどんなものか。



●AもBも。



 これである。どちからだけ、という貧困な発想ではなく、悩んでないで両方ともいただいちゃえ! という大胆な、それでいてあまりにもシンプルで、かつ当たり前な発想なのだ。

 ハートで考えれば、どうしたってこのほうがいいのに、その決断をあえてさせまいとする力が働く。

 それどころか、その豊穣な選択が「悪いこと」であるかのごとく思わせ、あわよくばその選択をする人物に『罪悪感』なるものを抱かせようとしてくる。

 この「古い常識、しきたり」がいい悪いに関係なく、当たり前のものとして人の意識の中に刷り込まれているので、まずは反応として拒絶を引き出されてしまいやすいのだ。



 この映画の中でも、二組の親たちは子どもを交換するのかしないのか、という選択肢しかあると思っていない。でも、実際にうまくいかない体験、皆が笑顔になるにはどうしたらいいのか? を素直に考えてみた結果、新たなる可能性の扉にたどり着く。そう、子どもの交換とか言わず、みんなで育てればいいじゃないか——。

 で、私からの予言めいた言葉。



●未来に、古い家族制度が崩壊する。

 結婚制度(一夫一妻制)だけが選択肢ではなくなる。



 子どもを産んだ親だけが、その子を育てる。

 どんな親であろうが、産んだら全面的に子育ての責任がある——。

 その考え方に、ずっと人間は縛られてきた。

 中には、そのせいで苦しんできた親もいる。若すぎて、親としてどいうしていいか分からない。うまくいかず、自己嫌悪に苦しむ。

 また子どものほうも、親としての自覚も能力もない親に苦しむこともある。ネグレクトや、炎天下の車内で放置され死亡・親はパチンコ、という現象もそのひとつ。

 生みの親が子を育てるべき、が当たり前すぎて、前提を疑うことすらない。

 もちろん、親が子を育てる責任などどうでもいい、ということではない。

 ただ、なぜ生んだ親ばかりに重責を負わせるの? ということである。

 大事なのは、『みんなで支える(育てる)発想』である。



 宇宙のある星では、生みの親は子供ができたら「年長者」に預けるんだそうな。

 一種の学校、みたいなものかな。そこで、知恵の豊富な彼らから、子どもは実に沢山の生きた知恵を学ぶ。もちろん、所々で帰って来て、生みの親と過ごす時間も少なくはない。

 私は、この星のやり方がよくて、今の地球の在り方がそうでない、とは言わない。

 今まで通りの家族制度でうまくいく人はいい。でも、その枠からはみ出てしまうケースに関しては、もっとおおらかな人間関係の在り方が選択できていいんじゃないか、と思う。

 あなただけが抱え込まなくていいんだよ。みんなでカバーしようよ。

 誰がお父さんでもお母さんでも、誰があなたの子どもでもいい。人ひとりひとりは、全体の財産。その時一番関われる人、対象を愛せる人が担当でいい。



 結婚制度もそう。

 原始社会は(今でも一部地域では)一夫多妻制があった。

 もちろん、逆の一妻多夫制もあった。

 でも、宗教的概念が常識として浸透したこともあって——

 一夫一妻制、つまり一人の男と一人の女が、ずっと添い遂げるという男女のカタチが、文明国家ではほぼ前提となった。そして、この前提を疑う人は、なかなか出てこない。世界一影響のある宗教と言ってもいいキリスト教が支持している、というのも大きい。

 我々の社会でこの枠から外れると、白眼視される。その人物が個人的にいい人であるかは、その瞬間関係なくなる。選択自体があり得ないからだ。

 人類は、男女のペアだけしかダメという前提から、同性愛者の結婚も認めるなど (それでも地球全体としてはまだまだ)、少しは進歩した。が、まだこれはない。


 

●多夫多妻制



 これは、聞いただけで皆吹っ飛ぶだろう。

 エエッ!? って。

 気に入れば、皆が納得すれば全員仲良くなっちゃいなよ。

 単に、そういうことである。

 AかBかではなく、AもBもの究極形態である。

 一夫多妻制、一妻多夫制も凌駕する、新発想。

 もちろん、一夫一妻制がいい、という人も残り続けるだろう。それは選択の自由。でも、望めば一方でもっと自由な、融通の利く関係が成立できる。

 そしてどのスタンスを取っても、どっちがいい悪いでケンカすることはない。

 どちらもが、その在り方を尊重される社会。

 これが、いつか実現する流れになる——。



 今の話を聞いて、とんでもない! と反感を持たれた方もいるだろう。

 でも、よく考えてみてほしい。



●一夫一妻制が、本当にすべての人を幸せにしていますか?



 今は当たり前すぎて驚かれもしない、離婚率の高さ。

 こんなボロボロな現状でも、人は結婚制度にしがみつき、傷付く。

 代替案がないから、他の発想がないから、仕方がない。

 お店屋に行って、ほとんど商品が残ってなくて、気に入ったものはないけれどとりあえずこれでも買っとくしかないか、みたいな感じ。

「他の新しい店にいけばいいじゃん?」と発想できる開拓者(パイオニア)がこれから出てくる。



 パイオニアは苦労するはずである。何でもそうだが、初めてそれをする人は大変だ。今でこそ、食べてはいけない(食べたら死ぬ)植物が分かっているが——

 大昔に、最初に口にした人間がいるはずだ。その結果を見て、「ああ、これは食べない方がいいんだな」と学習する。他人のおかげで、自分は苦労なしに危機回避できたわけである。他人さまさま、である。

 これからの時代、今までの家族制度、結婚制度ではすべてをカバーできない、と気付いた魂から、神としての本当の自由に気付いた魂から、現実をブレイクスルーするケースが多発するだろう。



 彼らは、最初旧時代への固執から逃げられない人々の攻撃に遭うかもしれない。

 真の自由と変化を恐れる人々の反感を買うかもしれない。

 でも、それも通過儀礼のようなものであり、一過性のものである。

 やがて、皆一定の在り方に固執し、そうでないものを認めないことのバカバカしさに気付くだろう。きっと皆、もう疲れ果てているはずなのだ。今までの常識的在り方に。ただ、勇気をもって目を背けず見ることを、先送りにし続けてきただけなのだ。



 新しい家族のかたち。

 新しい、男女の在り方のかたち。

 そこに目覚める者を、私は応援する。

 もし同意していただけるなら、これをお読みのあなたも——

 自分が目覚める時、そんな自分に許可をあげてほしい。

 そして、目覚める他人にも、あたたかい目を向けてあげてほしい。

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