ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~願いで現実を上書きできる世界で転生を祈り続けた少年、願いどおりのスキルを得て、美少女ハーレムを創り、現代知識と聖剣で世界最強へ突き進む~
1章8話 21時43分 ニコラス、死神の包囲を完了する。
1章8話 21時43分 ニコラス、死神の包囲を完了する。
21時43分――、
死神の包囲が完了した。あとは一斉攻撃を開始するだけである。
東西南北の四方でも、それに北東、南東、南西、北西を加えた八方でもない。
流石に手を繋いで円環を作る、とはいかないが、それでも充分に、ほとんど360°から死神を囲っていると言っても過言ではなかった。
広場、建物の屋根の上、木々の梢の上、トドメと言わんばかりに魔術で浮いている空中。
住民の避難が完了したエリア全域にて、それならお構いなし、と、そう言わんばかりに、七星団の団員たちは至るところで配置に着く。
先刻、結界に異常が見受けられて、それに気付いた団員も多々いたが――彼らは仲間を信じているし、軍事力を持つ組織に所属する一員として現実を見ても、他の部隊のやることを気にして、自分たちがやるべきことを疎かにするなどナンセンスだった。
それではなんのための配置、役割分担なのかわからなくなってしまう。
ゆえに、結界は結界の担当に任せて必然。
死神を包囲する団員たちに、結界になにかが起きたことによる焦りは特に見受けられなかった。みな一様に、たとえ焦ってしまっても、それでも冷静さを維持できるように努めている。流石は戦争経験者の集団と言ったところだろう。
そして、それを指揮するのは特務十二星座部隊の序列第11位、【宝瓶】のニコラス・フライフォーゲルだった。
彼は歴戦の猛者だった。若い頃は序列第3位まで昇り詰め、
彼は今、60年を超える月日を生き、初老と呼んでも差し支えない
通常ならば最前線から退いて、参謀司令本部などで活躍する方が適切と言えば適切だろう。
しかし、それはニコラス本人が許さない。
彼の性分は最奥で策を張り巡らせるよりも、最前線で身体を動かす方に傾いていたし、そしてなにより――、
「――死神よ、宣戦布告だ! ワシは今生において二度と現れぬほどの
邪魔をするな! 我が道を空けろ! ワシが墓の下で永劫安らかに眠る同胞の悲願を代理し、それに完膚なき終幕を引くまで、貴様に出番は与えない! 不届き者には世界という舞台から退場願うッッ!
柄にもないが、ワシは今、従えているのじゃよ! 国王から預かった選りすぐり部隊を! 騎士が総じて500以上! 魔術師が総じて1000すら超越! みな
往くぞッッ!
「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ…………ッッッッッ!!!!!」」」」」
総軍に響き渡る雄叫び。
まさにそれは月下に木霊す餓狼の遠吠え、その大合唱さえ彷彿とさせる。
いかなる時代、いかなる場所、いかなる敵兵であっても、自軍の士気を高めるのに躊躇う道理はどこにもない。
叫びたいだけ叫べばいい。吼え足りない文だけ吼えればいい。喉を裂くほど声を張れ。それを咎める仲間はどこにもいない。眼前の死神に、思う存分、我らが心意気を見せ付けるべきであった。
恐らく、死神にそれは通じない。
なにも感じていないという意味では一緒だが、七星団が弱いからなにも感じないのではなく、そこまでなにかを思う知能がない、という意味で。
しかし、それがどうした、と、そうニコラスは一笑に付す。
この咆哮の意味を知らずに消滅に向かうなど、ニコラスからしてみれば憐憫の対象である。
「この魔術の効果は味方の眼球を一時的に魔眼に変えるというモノ。そして、今回の魔眼の能力は視認した敵を弱体化させて、視認した味方を強化するというモノ。認識を弄られたらマズイ魔術ではあるが、死神相手にその心配はあるまい」
確かにニコラスの言うとおり、今回の魔眼の効果は『敵を弱体化させて味方を強化する』という能力だ。ただ、本当にこれだけならあまりにもシンプルすぎて、他の魔術師にも真似事ができるだろう。
だが当然、それだけではない。否――実を言うと本当はそれだけなのだが、ニコラスの魔術はその術式の複雑さと、性能の凄さが常軌を逸していた。
重要なのは味方の眼球の数と、それに入った味方の強化や敵の弱体化の、ニコラスの限界まで続く極限の乗算。
魔術を施した味方の眼球を、いわゆる魔眼に変化させ、その視線に敵の弱体化を促す効果を付与するのが第1段階。
さらにその視線にはもう1つ、魔眼の視界に入った敵の眼球を、『視界に入れた敵を強化する魔眼』に変化させる効果を付与させてある。
結果、敵から見た敵、敵の視界に入った自軍の兵士たちは強化され、さらにその対象にはニコラスの魔術で変化した魔眼も含まれている。これが第2段階。
となると必然、敵はさらに弱体化するのだが、敵の眼球は全てニコラスが掌握して七星団側の物になっているので、弱体化の対象に含まれない。
逆に、敵が複数人いてアイコンタクトを取った場合、敵Aの魔眼が敵Bの魔眼だけを強化して、敵Bの魔眼が敵Aの魔眼だけを強化する、ということも充分にありえる。これが第3段階。
七星団を強化する効果を強化された魔眼で、さらにさらに、敵が七星団の団員たちを視界に入れれば、さらにさらに七星団の団員は魔眼と共に強化される。これが第4段階。
そしてこれを魔術が解除されるまで永遠に繰り返すのが第5段階だった。
最後の第6段階は――、
――これを1対1ではなく複数人で同時に行うということ。
「今回は死神が1体だけじゃからのぉ……、十全の効果は発揮できない。が、それでも第1~第6段階の中で、たった最後の1つだけが発生しないだけの話。言ったじゃろ? 騎士が総じて500人以上、魔術師に至っては1000人以上、合計で1500重以上の弱体化が貴様にかかっておる」
ついでに語るなら、魔力切れについても特に心配はない。
一種の強化魔術を永遠に乗算させるなんて、気が狂うほどの魔力が必要に思えるが、件の強化には『魔力の運用の効率化』も含まれているのだから。
「さぁ! いざ尋常に、死神にも寿命をくれてやる! あまり下等生物を舐めない方がいいことを教えてやるわい!」
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