ぼくと彼女の夏休み

にゃんごろげ

1日目

 8月1日、時刻はお昼を回ったころである。

 僕は太陽が照らしつける炎天下の中、コンビニの袋をぶら下げて自宅へと帰る最中であった。

 額から大量の汗が流れる。早く帰らないと袋の中のアイスが溶けてしまう。僕は帰路を急いだ。

 なんとか自宅へとたどり着く。自宅とはいっても、2階建てのアパートの一番端の部屋が僕の暮らしている部屋だ。カギを差し込み扉を開く。部屋の中には心配そうな表情をした一人の女性がベッドに腰かけていた。


「お帰り。外すごく暑そうだったから心配してたんだよ。大丈夫だった?」


 彼女は北波エリ。僕の恋人といったところである。大丈夫だと声をかけ、袋の中からアイスを取り出す。よかった溶けてはいないようだ。


「ありがとう!やっぱりこんなに暑い日にはこれだよねー」


 そう言ってエリは棒付きのアイスを口に頬張る。自分も額の汗をタオルで拭いながら、カップアイスを取り出す。他愛もない会話をしながらアイスを食べ続けていると、エリは申し訳なさそうに呟いた。


「ごめんね。私がこんなんじゃなかったら、もっといろんなところに行けたんだけど」


 エリは不治の病だ。治療法もまったく見つかっておらず、前例もない。先週彼女は医師から余命一カ月とくだされていた。だが彼女は落ち込んだ様子を見せることはない。むしろ前と変わらず明るくふるまっている。ならば自分も彼女としたいことをしようと決めたのだ。自分は気にはしていないと彼女に告げる。


「あいかわらず君はやさしいね。まあ、私はそんなところに惚れたんだけどね!」


 エリは笑顔を見せる。その笑顔は窓から差し込む地用の光で照らされ、とても輝いて見えた。


「よし!それじゃあ今夜はめんどくさいし、出前でもとろうか!ピザにする?ラーメンでも大丈夫だよ」


 めんどくさいという理由が実にエリらしい。明日からはどんな毎日を過ごそうか、エリといっしょに何をしようか、僕の頭の中はそのことだけで一杯になっていた。



 これはぼくと彼女が過ごした最後の夏休みのお話だ。

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