第123話 集団戦/未柳と吉奈の交錯は、他のメンバーに影響を与えた

 お笑い生徒会長の未柳は、敵である吉奈をリスペクトした。


「そういうの、本当にかっこいいよ」


 ファイターのラウンドシールドを、アサルトライフルの小口径高速弾に合わせた。


 すべてを防ぎきれるわけではない。


 そんな腕前もない。だが一発でも、二発でも防いで時間を稼げれば、東源高校の勝率が上がっていく。


 運命の瞬間がやってきた。


 どうやら魔女のリーダー・吉奈も、たくさん努力したが、完璧ではないらしい。


 アサルトライフルの初弾は、やや狙いがそれていた。シールド防御に関係なく、明後日の方向へ飛んでいった。


 しかし二発目以降で、エイムを修正したため、命中精度が飛躍的に上昇する。


 小口径高速弾の集弾率が、未柳のファイターに収束した。


 しかし未柳のファイターも、小さなラウンドシールドで、二発目を防いだ。


 だが三発目が、脇腹にヒット。HPゲージが削れてしまう。


 もちろん、ライフル弾はまだまだ飛んでくる。マガジン一本が空になるまで、ずっと。


 なにせソルジャーの攻撃手段は、フルオート射撃だ。精度を犠牲にすれば、秒間のダメージ量は凄まじいものがあった。


 そんなことは、未柳だってわかっていた。


 ファイターの立ち位置を、微妙に横へ動かすことで、四発目を回避。


 ただし、五発目はヒット。HPゲージが、かなり危ういところまで減ってしまう。


 だがその代償に、ようやく吉奈のソルジャーに、近接攻撃が届く距離まで近づいた。


「あとは、打ち上げスキルを当てるだけ」


 ファイターは、レベル二に上がった時点で、打ち上げ攻撃スキル《シールドバッシュ》を覚えている。


 打ち上げ攻撃が成立すれば、吉奈のソルジャーは真上に飛び上がって、しばらく移動不可能になる。


 ただし、反撃行動や防御行動は可能だ。


 しかしソルジャーには、防御手段が存在しないため、その場で打ちあがること自体が致命的だった。


 魔女のリーダー・吉奈は、気合の雄たけびをあげた。


『相打ち覚悟で、敵のファイターを潰す……!』


 ● ● ● ● ● ●


 吉奈のソルジャーは、ノックバックスキルで吹っ飛ばされた時点で、自分がダウンすること前提に最善策を考えている。


 逆に考えれば、花崎高校のメンバーたちは、いまのポジションを下手に動かさないほうがよかった。


 しかし、人間の感情は、ときに採算性を無視してでも、仲間を守るために動いてしまうものだった。


 花崎高校のメンバー二名・心配性の真希のハンターと、優香のプリースト。


 この二人が、吉奈を救出するために、前線に出てきたのである。


 一か八かの選択だった。


 もし歯車がうまく噛み合えば、集団戦の流れを花崎高校に傾けることができる。


 だが失敗すれば、東源高校が圧倒的有利になるだろう。


 こういうギャンブルみたいな戦い方は、吉奈のリーダーシップに存在していなかった。


 そんな練習だってしてきていない。


 しかし、すでに仲間たちは動いてしまった。


 ならば賭けるしかない。ギャンブルが成功するほうに。

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