第113話 集団戦/俊介の格闘家から

 東源高校/花崎高校――両校の運命を決める集団戦が始まった。


 kirishunこと桐岡俊介は、与えられた仕事をまっとうする必要があった。


 敵の重要キャラクターであるソルジャーを、ノックバックスキルで吹っ飛ばして、仲間たちの集中砲火を浴びせること。


(なによりもタイミングが重要だ。どれだけスキルの精度が高くても、タイミングを間違えれば、すべてが台無しになる)


 俊介の格闘家は、ベストポジションに潜伏してから、敵が動いた瞬間に飛び出した。


 タイミングそのものは完璧だった。


 しかし、花崎高校にも狙いがあった。


 東源高校のファイターとハンターが、罠にかかっていたのだ。


 彼らが動いたのは迂闊(うかつ)だったのではなく、罠にかかった標的を倒すためだった。


 この駆け引きにより、どちらの学校が、自分たちのやりたい作戦を実現できるかの戦いになった。


 東源高校は、格闘家のノックバック攻撃を活かして、ソルジャーを倒したい。


 花崎高校は、罠にかかったファイターとハンターを、短時間で倒したい。


 時間勝負だ。ミスをせずに、自分たちの作戦を素早くこなすこと。


(こんな大事なときに、なんだって俺は、一本目の試合で〈コンセントレーションナイン〉を使ってしまったんだ)


 俊介自身の必殺技である〈コンセントレーションナイン〉は、一日の試合で一回しか使えない。


 そのはずなのに、一本目の試合で使ってしまった。


 今になって思い返してみれば、どう考えても負ける試合だったのだ。


 しかし、全国大会のかかった試合だから、つい使ってしまった。


 もしかしたら自分の個人技で、この劣勢をひっくり返せるかもしれないと。


 その結果が、リソースの無駄遣いであった。


(落ち着け。過去のことを嘆くより、いまやれることを成功させるんだ。この状況で俺にやれることは、綺麗にノックバックを決めることだけ。その他のファクターに関しては、このポジションからは干渉しようがない)

 

 俊介の格闘家は、花崎高校全体の動きに気をつけながら、魔女のリーダー・吉奈のソルジャーに接近していった。

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