MRAF(MOBA+RTS+Action+FPS/Fighting)

第110話 心配性の真希だって、適切なリスクを背負える

　心配性の真希は、試合の流れを読むと、最前線まで進出した。

　彼女が使っているハンターは、もうすぐ奥義（フレイムアロー）のクールダウンが終了する。

　真希は、心配性なだけあって、もし失敗したらどうしよう、と不安を抱えていた。

　しかし、不思議と指先の動きに迷いはなかった。

　むしろ心配性であることがプラスに働き、敵の行動パターンを複数想定できていた。

（あたしだって、花崎高校の一員なんだ）

　真希は、たくさん練習して、いくつもの試合に出てきた。

　全国大会は経験できなかったが、それでも東京大会のオフライン大会で戦ってきた。

　どんな心配性だって、場数を踏んでくれば、うまく使いこなすことができるのだ。

（あたしは、あたしの仕事をこなすだけ）

　ついに《フレイムアロー》のクールダウンが完了した。

　あとは作戦通りに動くだけ。真希のハンターは、指定の方向に向かって、《フレイムアロー》を射出した。

　炎の矢が、射程無限で飛んでいく。一直線に真っ赤な線が引かれて、強引に視界を確保。

　自軍陣地と、敵軍陣地を繋げるように、真っ赤なラインが誕生した。

　その瞬間、kirishunの格闘家が飛び込んできた。

　彼は狙いすましていたのだ。真希のハンターが《フレイムアロー》を撃つ瞬間を。

　綺麗なカウンターである。

　東源高校は、強い時間帯を迎えるために、受け身の姿勢でゴールドを稼いでいる。

　だが、もし花崎高校が隙を見せるようなら、容赦なくカウンターを決める準備もしてあった。

　逆に考えれば、基本方針が受け身だからこそ、この時間帯に関しては、カウンター以外の選択肢がないのである。

　そう、真希は想定できていた。この流れを。

　なぜなら彼女は心配性だからだ。

「あたしみたいな凡人だって、ただ避けるだけなら、天才に対抗できる」

　敵の動きを予測できていれば、たとえ凡才であっても、対処が早くなる。

　真希のハンターは、すでに後退していた。

　kirishunの動きを先読みできていたので、《フレイムアロー》を撃った瞬間、ハンターを真後ろに下げたのだ。

　天才であるkirishunは、息を飲んでいた。

『まずい、俺たちの動きを読まれたのか……！』

　kirishunは、思考の切り替えも早かった。カウンターの失敗を悟るなり、驚異的な反応速度で撤退していく。

　だがしかし、手遅れである。いや正確にいうと、格闘家が撤退しても意味がない。

【東源高校がカウンターを準備していて、しかも先頭で格闘家が飛び込んできた】

　この情報に、さきほど《フレイムアロー》で確保した直線の視界を加算すると、東源高校のプレイヤーたちが、どこに陣取っているのかを割り出しやすくなる。

　そのうち、もっとも特定が容易なキャラがいた。

　ヴィジュアル系の加奈子がプレイする、ウィッチだった。