第14話 一勝一敗がけっぷち
俊介はヘッドセットを乱雑に外すと、冷えきった目頭を揉んだ。
ハンターがダメージを出さないと勝てない構成なのに、真っ先に落ちてしまった。だが俊介に油断はなかった。チーム練習にぬかりもなかった。本番でも石橋を叩いて渡るように視界を管理して、花崎高校の作戦を解読しながら行動した。
だが視界の外から綺麗に行動阻害を決められて、そのまま敵チームの集中砲火を浴びてダウンである。
『どれだけあなたの個人技が優れていても、スタンになってしまえば動けないわ』
吉奈の言葉は、俊介の魂で反響していた。まるで城塞の廊下で魔女の金づちを振り下ろしたみたいに。
もし真正面から戦って敗北したなら、綺麗な形で自信や誇りは折れたんだろう。
だがなにもさせてもらえずに敗北してしまうと、底なし沼に突き落とされたみたいに心が沈み込んでいく。
しかし落ち込みっぱなしでは、F2イースポーツどころか、黄泉比良坂に勝つことすら遠ざかってしまう。
だから敗因を知りたかった。己の弱点を知ることで、次の試合につなげるために。
恥や体裁を気にしている場合ではない。そう判断した俊介は、試合後の握手を求めにきた吉奈に直球で質問した。
「教えてください吉奈先輩。なんで俺の移動ルートを読みきれたんです?」
吉奈は、まるで懐かしい思い出を振り返る占い師のように、朗々と語った。
「あなた、茂みに隠した監視用の歩兵に適切な対処をしたでしょう? あれであなたが作戦面で成長したことを理解したのよ。なら東源は、チームとしての行動が最適化されてるわけだから、こちらの狙ったルートに釣りだせると思ったのよ」
「……狙って俺を釣りだしたんですか?」
「だってチームとしての行動が最適化されてるのよ? ならスローペースだったゲーム展開が突然加速したら、もっとも安全な作戦を実行して態勢を立て直そうとするじゃない。じゃあわたしたちは、その裏をかくために、最初から安全なルートを狙える位置に隠れてればいいのよ。足音を拾われないようにね」
吉奈の解説を聞いたことで、俊介は美桜や樹の作戦構築方法を思い出した。
「対戦相手に対するリスペクト、ですか」
対戦相手に対するリスペクトとは、競技シーンにおける思考方法だ。
〈対戦している相手は、与えられた手札のなかで、もっとも優れたものを実行するだろう〉
この思考方法を実践することで、綺麗にカウンターを決めることもできるし、被害を最小限に抑えることもできる。
ただしリスペクトしすぎた結果、せっかくのチャンスを見逃して、得られたはずのメリットを失うことだってあった。
だが上級者同士の戦いになればなるほど、ミスプレイはしなくなるし、もっとも優れた手札がなんであるかを把握しているため、必要不可欠の思考方法となる。
吉奈は、俊介に対して対抗意識剥き出しだったが、決してリスペクトを忘れていなかった。だから移動ルートを読みきれたのである。
「もしあなたが三年前からなにも成長していなかったら、定石もクソもない個人技だけで動くわけでしょう。それをやられたほうが困ることってあるのよ。だってわたしたちが隠れたところを通ってくれないわけでしょ。どのルートがもっとも安全なのかわからないんだから」
吉奈が手品のタネを明かしてくれたおかげで、俊介はチームの敗北に直接つながる自らの行動に気づいた。
「俺、音の定位から敵の方角を把握するのが得意だからこそ、安全策を主張したんです。どこからも敵プレイヤーの足音が聞こえないから、花崎陣地に近づくのが怖くて。もし勇気を出して〈スカウティング〉を花崎陣地寄りで使ってたら、ぜんぜん違う結果になってたんでしょうね」
吉奈は、くつくつと笑った。
「懐かしいわね。音の定位を聞き分けるのが得意だと、こういう細かな釣りに引っかかりやすい。去年の天坂美桜で経験済みだわ」
「あー……そういう……」
俊介は複雑な気分になった。どうやら美桜も同じ手に引っかかったらしい。あの賢くて性格の歪んだ女帝を釣りだすなんて、吉奈は心理戦を心得ているわけだ。もしかしたらタロットカードを通して学んだ知識や知恵が役立っているのかもしれない。
ならばそれに対抗できるほど、俊介も心理戦にも詳しくなればいいわけだ。吉奈をリスペクトすることによって。
俊介は、吉奈ともう一度固い握手を交わしてから、深々とお辞儀した。
「ありがとうございます、吉奈先輩。あなたのおかげで、俺はまた一つ進歩しました」
「いやになるわね。去年の天坂美桜と同じ反応よ」
吉奈は、運命の輪のタロットカードを取り出すと、俊介の胸ポケットに入れた。
どうやら運命の輪は、俊介と美桜の間でつながっているらしい。
子供のころからの因縁、元LMの確執、樹と引き離された腕前。すべてが激動の時代と一緒に輪転していた。
「必ず本選に進んで勝ちます、花崎にも、黄泉比良坂にも」
俊介は、胸ポケットに入った、たった一枚のカードに重みを感じながら、もう一度お辞儀した。
「楽しみに待ってるわ。でも黄泉比良坂を倒すのは、わたしたちよ」
吉奈率いる花崎高校の魔女たちは、ばいばーいと手を振りながら、小ホールから出ていった。
魔女たちの後ろ姿は、やけにかっこよかった。まるで作戦を完遂した特殊部隊みたいな後光がさしていた。
花崎高校を見送ってから、俊介は加奈子にもお辞儀した。
「加奈子先輩が、花崎の人たちと仲良くなっていたおかげで、俺は吉奈先輩から弱点を教えてもらえました。本当にありがとうございます」
加奈子は、ぎゅーいーんっとギターを弾いた。
「ただの偶然。あなたの学ぶ姿勢が、対立していたはずの相手から情報を教えてもらえることになった。おそらく黄泉比良坂の美桜ちゃんも、去年の事情は一緒だと思う」
去年の事情となれば、俊介は知らない情報だ。
このあたりの情報も、アナリストの馬場は調査済みであった。
「去年は黄泉比良坂も予選から参加してるんだよ。それで花崎と戦って一敗してね。どうやらこの敗北をきっかけに天坂美桜さんはさらに強くなって、本選で花崎と再戦したとき、圧倒的な力で倒せたみたいだよ」
一度は敗北した相手に、再戦して圧倒的な力で倒す。
俊介は、胸ポケットから運命の輪のタロットカードを取り出した。
「だからこいつを俺に渡したわけか」
もしかしたら運命の輪は、吉奈にも繋がっているのかもしれない。
● ● ● ● ● ●
大会の状況を整理していく。東源高校は残念ながら一敗してしまった。
もし次の試合で敗北すれば二敗となって予選敗退だし、勝利すれば二勝となって本選出場が決定する。
一勝一敗のがけっぷちであった。
尾長や加奈子を含めた三年生組は、今年が最後だ。もし予選で敗退すれば、志半ばで部活動を引退することになる。高校生活最後の大会を完走するためには、来週の試合で勝たなければならなかった。
東源高校が今より強くなるためには、本日の花崎高校戦のデータを使って、もっと確度の高い練習をする必要があった。とくに吉奈から習った『対戦相手をリスペクトする』手法は覚えたほうがいいだろう。
だが来週に向けた練習を始めるのは部室に到着してからであって、今はまだeスポーツアリーナのロビーで休憩していた。敗戦のショックによって、心身ともに疲弊していたからだ。
俊介は、ミネラルウォーターで喉を潤しながら、来週の対戦相手を気にしていた。
「馬場くん。来週の対戦相手って、もう決まったかい? そろそろ他の試合も終わるころだと思うんだけど」
馬場は、タブレットで大会運営のSNSをチェックした。
「重里だよ、いつもスクリムでお世話になってる重里高校だ。彼らもついさっき敗北して一勝一敗さ。試合に使ってた会場は小ホールDだから、もうすぐ出てくるんじゃないかな」
「重里、どことやって負けたんだろう」
「小此木学園」
小此木学園という名称が話題に上がった途端、尾長を始めとした三年生組が嫌な顔をした。それも最上級の嫌な顔だ。学校の嫌いな先生の名前が出たときより、よっぽど陰険な顔をしていた。
しかもちょうど小此木学園のメンバーがロビーを通過していくところだった。
やたらと尊大な連中であった。髪型や衣服は地味そのものなのだが、他人に対する態度が不愉快なのだ。行き交う人々をナチュラルに見下しているし、周囲の誰かを品定めして小声で笑うことに躊躇がない。
そんな集団の先頭を歩く人物は、いかにも性格が歪んでいそうな男子だった。豆みたいな輪郭と、暗く沈んだ瞳。頬は痩せこけていて血色も悪い。頭の先からつま先まですべてが不養生だ。実際体力に問題があるらしく、ただ歩くだけで疲れていた。なのに他人をあざ笑うときだけ精力的だった。
この愚か者は、尾長を見るなり、ふんっと鼻を鳴らした。
「誰かと思ったら三流eスポーツマンの尾長かよ。相変わらずテキトーなプレイして青春ごっこしてんのかよ。作戦が得意なだけじゃ勝てないんだぜ。せいぜい丸暗記と反復を駆使してうまくなれよ、偏差値の低い学校らしくな」
あまりにもひどい暴言に、俊介は怒るよりも驚いてしまった。いったいどんな食べ物を食べて、どんな教育を受けて、どんな私生活を送ったら、こんな人格が生まれるんだろうかと。
尾長も怒るより冷めたらしい。真冬の空風みたいな冷えきった声で返事した。
「君たち、相変わらず進歩してないね。その口の悪さが原因で、去年はペナルティをくらったのに」
どうやら小此木学園は、昔から問題を抱えているようだ。ペナルティのことを知るためにも、俊介はスマートフォンで大会規約を読み直した。
〈スポーツマンシップに反するような言動や行動を慎むこと。これに反した場合はペナルティもありうるので注意されたし〉
この一文は、大会HPの一番見えやすいところに書いてあった。しかも具体例として、去年の大会で発生した対戦相手への暴言問題が挙げられていた。
さすがに未成年が主役の大会だから学校名こそ伏せてあるが、SNSのログを漁れば小此木学園が問題を起こしたことはすぐにわかった。
そんな悪い意味で注目されているにもかかわらず、彼らは今年も尾長に暴言を吐いたのである。反省していないのは誰の目にも明らかだった。
「うるせぇなぁ、こんなことをいちいち問題にするほうがおかしいんだよ。知識と教養がないバカのくせにオレたちに指図するんじゃない、お前らも運営もだ」
小此木学園の部員たちは、悪態をつきながら建物を出ていった。
東源高校の関係者だけではなく、通りすがりの人たちまで唖然としていた。公衆の面前で、あんな態度をさらせば、誰だって耳を疑うだろう。
俊介は、小此木学園の実在性を疑っていた。あんな暴言を他人にぶつけられるなんて、現実世界を生きている生命体とは思えなかったのだ。もし彼らの正体が人間の皮をかぶったロボットだといわれたら、おおいに納得するだろう。
「とんでもない人たちですね。ペナルティ経験済みなのに、まったく懲りてないなんて……」
尾長は、生ごみにたかる害虫を見たような顔でいった。
「去年は、我々が彼らと対戦してね。まったくもって酷い試合内容だったよ。バッドマナーは連発するし、ボイスチャットの機能を悪用して暴言を言い続けるし、試合が終わってからも握手の際にバカだの無教養だのいわれた。その結果、小此木学園にはペナルティが加算されて、本選でステージのban枠没収になったんだ」
「ただの因果応報じゃないですか」
「たしかに因果応報だ。だが彼らは自分たちが悪いなんて、これっぽっちも思ってないぞ」
「むちゃくちゃですね、なんなんです、あの人たちは」
「そう遠くないうちに、小此木学園のeスポーツ部が異質な集団だとわかってくるだろう。それまで思い出さなくていいさ。あんな連中のために記憶の容量を使うなんてもったいない」
小此木学園に関する話題が一区切りついたとき、重里高校も小ホールDから出てきた。
● ● ● ● ●
重里高校eスポーツ部のメンバーは、小ホールDからロビーへ移動していた。
この集団の先頭を進むのは、部長の西岡だ。東源高校のスクリム相手としてお馴染みである。
彼は元野球部らしく、頭は丸刈りで、筋肉質だった。けっしてかっこいい顔ではないのだが、定規で測ったようにかっちりした顔立ちだった。眉毛の角度も分度器で測ったようにくっきりしているし、鼻や口は地図上の等高線みたいに重なっていた。
そんな良く言えば凛々しく、悪く言えば濃い顔の西岡は、試合に敗北してしまった。よりによって最低最悪の小此木学園に。
小此木学園は今年も強かった。暴言や態度の悪さなどスポーツマンシップに反した連中だが、実力があるのも確かだ。
ただし黄泉比良坂や花崎高校みたいな安定して強い学校が相手になると、一方的な展開で負けることが多い。なぜなら暴言の矛先がチームメイトにまで向かうため、ミスした仲間を罵ってしまうからだ。
eスポーツにかぎらず、どんなチームスポーツにも共通していることだが、仲間を信頼できなくなったらおしまいだ。どんな古豪だって空中分解して敵と戦う前に失速するだろう。
だが小此木学園eスポーツ部は、誰かを罵らずにはいられない。
なお小此木学園自体に問題があるわけではない。むしろ小此木学園は都内でも有名な進学校の一つであり、自由な校風と穏やかな生徒たちが自慢だ。
だがなぜかeスポーツ部だけが異質だった。
彼らは善なるものから滑落した存在なのか、それともただ最初から人格が歪んでいた人たちなのか。
どちらにせよ、改善するか否かは当人たちの問題だ。西岡が考えることではないだろう。
小此木学園について考えおわったとき、重里高校のメンバーはロビーにたどりついた。
先に試合を終えた東源高校のメンバーが休憩していた。だが雰囲気が悪い。まるで薄暗い黄昏みたいに。そんな彼らの乾いた目線は、建物から遠ざかっていく小此木学園の後ろ姿に集まっていた。
ロビーでなにが起きたのか、西岡は察した。
「元気を出そう、東源のみんな。あんなやつらの暴言なんか、さっさと大会運営に報告して忘れたほうがいい」
西岡は、わざとらしいぐらい明るく振る舞った。小此木学園の残した悪い雰囲気を吹き飛ばすためだった。だが自らを鼓舞するためでもあった。あんな程度の悪い連中に負けるなんて、やっぱりショックだったのである。
そんな西岡の仲間想いでありながら繊細でもある内心を、長年の友人である尾長は察したらしい。使い古した財布から小銭を取り出すと、自動販売機で缶ジュースを一本購入して、西岡にプレゼントした。
「西岡くんも、お疲れ様だな。小此木みたいな連中と試合をしたら、それはもう苦労をしたろうから」
西岡は、尾長から缶ジュースを受け取っていいのか迷った。尾長の家庭の事情を知っているからだ。彼みたいな賢い生徒が、スポーツ特待生で入学するなんて、事情があるに決まっていた。
貧困家庭なのである。
たった一本の缶ジュースを購入するお金ですら、明日まで食いつなぐための貴重な資金になりうるわけだ。
そんな裏事情があるにも関わらず、尾長は西岡のために缶ジュースを買った。
ならばこの缶ジュースは、どんな宝飾品よりも価値のある缶ジュースに決まっていた。
西岡は、昔からの友人の心づかいに感謝しながら、缶ジュースを受け取った。あとはもう気持ちよく飲むだけだ。ぷしゅりとプルトップをあけて、勢いよく口に持って行った。まるで神から与えられた雫を飲み干すかのごとく、ごくりごくりと喉を鳴らす。ぷはーっと元運動部らしく息を吐けば、小此木学園に負けたことなんて吹き飛んでいた。
「安心してくれ尾長。あんなしょーもないやつらの暴言なんて気にしないさ。さぁ駅まで一緒に行こうぜ。歩いたほうが気分も前向きになるもんだよ」
重里高校と東源高校の部員たちは、駅に向かって歩き出した。会話のほとんどはeスポーツ関連だ。【MRAF】にかぎらず他のタイトルの話題も含んでいた。この場にいる誰もが同じ趣味を持っている仲間だから、やけに会話が盛り上がった。
そんな流れで、西岡は尾長をファストフード店に連れ出した。世界で一番有名な某チェーン店である。だがこのお店のとある商品は、日本において便利な価値を持っていた。
「さっきジュース買ってくれたお礼に、ハンバーガー買ってやるよ」
西岡はハンバーガーのセットと一緒に、マックカードを二千円分購入した。
マックカードは便利である。そのままお店で飲食に使ってもいいし、もしファストフードに興味がなければ金券ショップで換金したっていい。売れ筋商品だけあって換金率が高く、確実に缶ジュース一本分より大きな金額になるだろう。
この便利なカードを、尾長にそっと渡した。他の誰にも見られないようにだ。
「西岡くん、君は」
尾長は、ほんの少しだけプライドが傷ついた顔をしていた。いくら貧困家庭で暮らしていても、ぶしつけな施しは侮辱になるからだ。
だが西岡は、安直な気持ちで金券を渡したわけではない。
「尾長。おれは本当にジュースが嬉しかったんだ。小此木学園に負けた悔しさが、お前のジュースのおかげで吹き飛んだんだ。だからこれは感謝の気持ちさ。だからなにもいわずに受け取ってくれ」
「しかし西岡くん。これではまるで……」
「尾長は、今までずっとがんばってきたじゃないか。高校進学のためにスポーツ特待生に打ち込んだことも、膝を怪我して大好きなバスケができなくなったときも、eスポーツ部を立ち上げて特待生を維持したことも。おれは全部見てたぞ。だからお前はたまには報われたほうがいいんだよ。でなきゃ世の中のほうが間違ってる」
つい冗舌になるほど、西岡は尾長を苦労人だと思っていた。彼のあまりにも報われない人生に友人ながら理不尽を感じていた。だからkirishunこと桐岡俊介が東源に入学したことは神様の贈り物だと考えていた。
尾長という苦労人に、ようやく一つの恵みを与えたのだと。
「西岡くん、小生は……」
尾長は、まだマックカードを受け取るかどうか迷っているようだった。
だから西岡は、最後の一押しをすることにした。
「それにさ、オレもう田舎のじいちゃんとこで働いてるから、ちょっとは貯えがあるんだぜ。だからさ、気にせず受け取ってくれよ」
西岡は高校卒業後の進路が決まっていた。田舎の祖父宅に引っ越して、農業を継ぐのである。
西岡は野球もeスポーツも好きだが、土をいじるのも好きだった。おそらく気質に合っているんだろう。
そんな西岡の農家みたいな粘り強さに負けたのか、ようやく尾長はマックカードを受け取った。
「これはeスポーツ部のがんばりが認められた贈り物なのだから、うちの部員たちと一緒に飲み食いするのがフェアだと判断したよ。みんなで獲得したものを小生が独り占めしては卑怯だろう?」
尾長の青いフレームの眼鏡は、まるで朝日のように輝いていた。あまりもの眩しさに、西岡は彼の爬虫類みたいな顔を神々しく感じた。
「尾長、お前は本当に正々堂々と生きてるんだな」
西岡は、尾長と固い握手を交わした。友人の手のひらから伝わってくる熱い血潮は、来週の試合が激闘になることを予言していた。
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