第56話 最終試練
私たちは次の指示が入るのを待っていた。
扉が開かず、私たちは依然として大広間に閉じ込められたままだった。
カカのイライラが限界に達しようとしたとき、テテからの放送が入った。
「お待たせー!
次の試練は制限時間も特別なルールも無し!
ただ王座の間を目指すだけ!
そして王様の元へたどり着けたら、試験合格!」
扉が開いた。
「本当に?」
私は疑った。大切な仲間を殺したテテには、強い怒りを覚えていた。
言葉には怒りがこもっていた。
「もちろん!
王様の元へ着いたら、そのまま上奏していいよ!」
私たちは、足を進めた。
「たどり着けるならね」
低い声で、テテは言った。
瞬間、足元の床が消えた。
私たちはそのまま落ちる。
発生した穴の大きさは小さく、たまたま近くにいたナナとカカ以外、私たちはバラバラになった。
状況を把握できず、なされるがままに落ちていく。
落ちている間、周りの景色は真っ暗だったが、目を凝らすと、配線や歯車などがチラホラ見えた。
そんなに深くは落ちず、私は数秒後にお尻を床にぶつけた。
「痛っ!」
思わず叫んだ。辺りは薄暗く、私は箱のようなものの中にいた。
なんだこれ?
私がそう思うのと、箱が動き出すのは、ほぼ同時だった。
私が乗っているのはトロッコだった。
とてつもないスピードで進んでいく。横だけでなく、縦方向にも進んでいくので、私はトロッコに掴まらなければ、振り落とされるところだった。
しばらく進んだ後、唐突に明るい場所へ出て、トロッコは止まった。
目の前に誰かいる。
目がやっと部屋の明るさに慣れてきて、うっすらとその人物の顔が見えてきた。
体は大きくがっしりとしていて、優しそうな顔をしている。
見覚えのある顔だった。
「んー?君は……町であった子だねえ。
随分としっかりした顔つきになったな」
その人は、私が町でぶつかったサイの人だった。
「久しぶり。なんでここに?」
その人はニコニコしたまま告げた。
「それは僕が……王様の側近だからさ」
私は急いでその人から離れた。
驚いて、心拍数が一気に上がるのを感じた。
「僕の名前はロロ。残念だなあ。君を殺さなくてはならない。
でも良かった。君一人なら、すぐに終わるだろう」
ロロはサイの姿になり、突進をしてきた。
速い!車のようだ。
避けないと……!
疲れが重なって体が動かない。
「死ねえええええ!」
物騒な声と共に、ロロが横から蹴飛ばされた。
現れた人物は、カカとナナだった。
「ちっ!頑丈なやつだ」
カカが悪態をついた。
「茜、大丈夫?」
ナナが心配をしてくれた。
「うん。どうして二人ともここに?」
「どうしてって……。トロッコが止まったからよ。
最悪なことに、馬鹿野郎と同じ穴に落ちちゃって……」
「最悪なのはこっちだよ!
皆バラバラに落ちたのに、なんで俺はお前となんだよ!」
二人はお互いににらみあった。
「ナナ、危ない!」
気がつけば、ロロがナナに突進をしてきていた。
私はナナを庇う。ナナは私を後方へ急いで投げる。
そのお陰で、ロロからの衝撃が弱くなった。
私は斜め上に飛ばされていく。
「友達は飛ばされて行っちゃったねえ。
さて、君たちの名前は?」
カカが鼻で笑った。
「言うと思うか?」
「ナナよ。この男はアホ
「名乗るのかよ!
ていうか、誰がアホ男だよ!
おい、サイ。俺はカカだ。アホ男じゃない」
「あら、名乗ってるじゃない。さっきまでの頑固はどこにいったのかしら?」
「変な名前で覚えられるくらいなら、自分から言うわ!お前のせいだからな!」
ロロはそんな二人の様子を黙って見ていた。
「仲が良いねえ」
「「良くない!」」
ロロはどこかでみたコンビだと思った。
「僕はロロだよ。さて、名前も分かったことだし、挨拶はここまでにして、死んでもらおうかな」
ロロは表情一つ変えずに言う。
「誰が殺されるかよ」
「返り討ちにしてあげるわ」
カカとナナは戦う姿勢に入った。
【カカ・ナナ VS ロロ】
背後に危険を感じて、後ろを確認すると、窓ガラスにぶつかるところだった。
私は急いで手を虎に変え、窓ガラスを体がぶつかる前に、叩き割った。
私はゴロゴロと転がりながら、その部屋の中で停止した。
目が回る。
顔をあげると、小さい子供と目があった。
明るいオレンジ色を纏っている。
「きゃはは!あなたなのね!私の相手は!」
「もしかして、側近?」
「そうよ!私はキキ!よろしくね!」
全く休む暇がない。
ここにはさっきのカカとナナのように助けてくれる人はいない。
私は立ち上がって、キキを睨み付けた。
「ここを通してもらうよ。私は王に会わなくちゃいけない」
「様をつけなさい!失礼な人!
お仕置きしなきゃ!
ふふっ……私ね、人が苦しむ顔が大好きなの。
あなたの苦しむ顔、存分に見せてね!」
【茜 VS キキ】
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