第55話 側近

画面の向こうで、楽しそうに笑っている子達がいる。

今頃は誰も立っていないはずなのに。

私の化け物が、悠々と佇んでいるはずなのに。

テテは目を見開いて立ちすくんでいた。

「あ、あ、」

意図せずに声が漏れる。

「あのやろおおおお!」

感情が爆発する。

「あんなに手塩をかけて育ててやったのに!

あんな、あんなやつらに負けるなんて!

10年だぞ!?10年もかけて……。

ああああああああ!もう!

私の研究結果が……!

結局、屑はどうしようと屑か」

テテは舌打ちをする。

感情の行き場を探して、狭い部屋をうろうろと歩いた。

「大広間で全員殺すつもりだったのに」

テテは表情を作った。怒りから、冷静な顔へ。

深呼吸をして、心拍数をゆっくりにしようと試みた。

テテは自分に言い聞かせる。

「落ち着けー。落ち着け、私ー。

今回の原因は何?いつもと違うことは?

参加者同士が協力したからだ。それもよく連携のとれたものを。人数が多かったのも問題だ。

それならば、バラバラにしてしまえばいい。

そして完全に、全滅させる」

テテは数十秒前とは別人のように、淡々と、思考を展開させる。

「仕掛け?生ぬるい。

最大勢力を持って迎撃する」

テテは緊急連絡メールを送った。


書斎執務室にて、テテは懐中時計を眺めている。

「テテお姉ちゃぁぁぁん!」

身長の低い幼子が、ダッシュで部屋の中に入ってきた。テテと血は繋がっていない。

「キキ、走ってこなくてもいいんだよ?」

「いやいや!テテお姉ちゃんのためなら、いくらでも走るよ!それで、テテお姉ちゃん、緊急の要件とはなに!?」

「全員がそろってから話すねー」

「そうなの……」

キキはしょんぼりとした。

「それでは、あと一人ということだねえ」

部屋の奥を見ると、一人の大男が支柱に腰かけていた。

「ロロ、いたんだー」

テテが声をかけた。

「ひどいねえ。でも、僕の特技は姿を消すことだから、しょうがないよねえ」

ロロは、にこにこと笑った。

扉が音をたてて勢いよく開いた。 

「よう、テテ。来たぜ」

そう言ってどや顔してみせたのは、セセ。

「遅い」

「ちょっとしか遅れてないからいいじゃないか。テテは細かいところをいつも気にするんだなー。んで?緊急の用件って?」

「私の化け物がやられた」

キキが驚いて手で口をふさいだ。

「嘘でしょう?

テテお姉ちゃんの化け物は、私たち4人の研究結果の中で、最も優れていたのに!」

王の側近達はその特権を利用して、各々の研究を進めている。

平和なこの国において、研究成果は評価の対象となる。

「おいおい!誰の何が優れてるって!?」

セセが食ってかかった。

「国民なんかにやられるなら、たいしたもんじゃなかったんだろ」

セセは嘲笑うように言った。

「うーん、最近耳がよく聞こえなくてねー!

もう一回いってもらえるかなー?」

テテはひきつった笑みで、セセを見た。

「はっ!何度でも言ってやるよ!

お前の研究はな……」

「はいはい。そこまでだよ、二人とも。」

ロロが両手で二人を引き離した。

「僕たち3人を一ヶ所に集めたってことは、報告だけじゃないんだよねえ?」

テテは頷く。

「そーそー!

皆にはね、参加者を殺して欲しいんだよねー!

その方が確実でしょ!」

「つ・ま・り?

お前の尻拭いを俺にして欲しいわけだ」

セセがニヤニヤしながら、テテを覗き込んだ。

「ほんっとーに嫌みったらしい言い方するよねー!」

テテは手を熊に変える。

セセも手を虎に変えた。

「ストップ、ストップ!

君たちは仲が良いねえ」

「「誰が!」」

二人でロロを睨み付けた。

「私はテテお姉ちゃんの為なら、なんでもするよ!

でも私一人で十分だよ!

すぐに皆殺しにしてあげる!」

キキはわくわくしながら言った。

「それを言うなら、俺だって余裕だ。全滅させるのに、時間はかからねぇよ」

「あのね、殺せばいいって問題じゃないの。

素早く、確実にやらなきゃ。

念には念を入れる」

ロロはウンウンと頷いた。

「最もだねえ。備えあって憂えなし!」

テテが両手を叩いた。

「それじゃあ、それぞれ好きな場所に散らばって!」

テテが指示をすると、側近達は移動をした。





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