白熱!イカサマバトル③
「わかってるじゃあねえか常史江。俺の目星では奴さんは俺達と同類だ。ほんでその能力を使ってゲームを有利にすすめてるんだ。野郎の自信がその証拠だぜ」
裏山はそう断言して意地の悪い子供のような笑みを浮かべた。そんな上機嫌な彼とは対照的にいつものダウナーな雰囲気を全身から放っている常史江が溜息一つつくと言った。
「…で、彼が超能力者だとしたらどうするというんだ?別に何も大した事はしてないだろう。ただのちょっとした賭けで儲けてるだけだ。俺達が首をつっこむ程の事では…」
「何言ってやがる。そんなもん決まってるだろ。アイツを賭け勝負でぶっ倒してこらしめてやるんだよ!超能力を使ったイカサマの勝負で小遣い稼ぎをしてる死刑すら生ぬるいド悪党だ。俺達がお灸をすえなくちゃなあ」
裏山は顔をずいっ、と常史江に近付けた。どうやら相当エキサイトしている様子だった。
「お灸をすえる、ねえ。金が欲しいだけだろ…君」
裏山は魂胆を見透かされたのか、一瞬うろたえた表情を見せた。
「な、な、何言ってやがる。この俺様にそんな下心があるとお思いかね?見損なうなよ!いいか?あの野郎は今はまだあんなはした金での賭けで満足しているが、ああいうタイプはその内、欲に目がくらんで大層な事をしでかすぜ。俺の鑑識眼をなめるなよ?アイツは間違いなく、ろくでもない野郎だ。目を見りゃ一目瞭然だ。だから今のうちに俺達が正義の鉄槌を下して奴の性根を矯正させる必要があるわけよ」
裏山は過去に自身が犯した大きな過ちを忘れたのか、見苦しく己の性格を棚に上げて自身の正当化と、紀美野に対し偏見にまみれた悪口を長々と熱く語った。その殆どが常史江の右の耳から左の耳へ通り抜けていった。
「はいはい。とはいえ、本当に彼が君の言う通り超能力者なのかわからないが、どんな能力なのかはっきりしない以上、どうやって対抗すればいいかもわからないぞ」
裏山は待ってましたと言わんばかりに、にたりと笑った。
「その点については俺も既に調べてある。勝利への第一歩はまず相手を知る事だからな。いいか?アイツが賭けに使うゲームには一つの法則性があるのがわかった。格闘ゲーム、レースゲーム、音ゲー、いずれも運より本人の実力が重視されるゲームだ。(まあ運も実力のうち、とも言うが)その一方で奴は主に運が勝敗を左右するゲームはやろうとしねえ。さっきの休み時間に奴にトランプの『戦争』で賭け勝負を挑んだがあっさり断られた。少なくとも『どんな勝負にも絶対に勝てる能力』とかいうわけでは無さそうだ。断る理由がねえからな。つまり俺の読みではこうだ。奴は相手に無意識の内に自分に負けるように暗示とか催眠術のようなものをかける能力なんじゃねえか?発動条件は不明だが、いくら暗示をかけたところで相手の運ばかりはどうしようもないからな。だから奴は運が勝敗をわけるゲームをやろうとしねえんだ」
「なるほど。『戦争』は完全に運任せのゲームだからな」
「そうともさ。それともう一つ。奴はどんなゲームでも『サシ』での勝負しかやろうとしねえ。賭けなんてのは複数の人間でも出来んのによ。あの太っちょは『サシ』じゃねえと気が乗らないからなんて言ってやがったが、どうせありゃ嘘っぱちだ。恐らく同時に複数の人間に能力を使う事は無理なんだろう。だから確実に勝利できる『サシ』での勝負しかしないってこった」
裏山はひとしきり説明を終えると、廊下の壁に寄り掛かって顎に手をあてて俯きながら思案に耽った。
「その2つが奴の能力の穴と言えば穴だな。そこをうまい事つけば紀美野のプレイヤースキルは素人に毛が生えたようなもんだ。自慢じゃねえが俺でも勝てる。しかも奴は能力にかまけて油断してやがる。しかし、口惜しいが俺には奴の能力を突破する案が思い浮かばねえ…そこでだよ」
裏山は顔をあげると常史江の顔を見つめた。常史江はわざとらしく目を背けた。そんな彼の肩をがっしりと掴むと裏山は鼻息を荒くして言った。
「君の力を借りたいと思う訳だよ常史江君。なあ、アイツにぎゃふんと言わせられるような何か出してくれよ!お前さんの能力で!」
裏山は興奮してそう叫ぶと常史江の肩を激しく揺さぶった。周りの生徒達がそんな彼らを見てニヤついて通り過ぎて行った。裏山のせいで頭部が縦に何度も揺れ、クラクラしながら常史江は虚ろな瞳で言った。
「…人をドラ〇もんみたいに言うなよ」
「おい親友の頼みが聞けんのか?いつからそんな薄情者になったんだよお前は!ええ!?」
裏山は唾を飛ばしながら、目を血走らせてがなり散らした。
「いつの間に親友になったんだか…それに君の考えが当たっていたとしたら十分に強力な能力だぞ。発動条件も対処方法もわからない以上、ある意味彼はこと運が絡まないゲームにおいては、マジに無敵かもな」
「チッッ打つ手なしってか!」
裏山は廊下の壁を右手で殴りつけた。
「いてえなクソが」
裏山が右手の甲をさすっていると背後で常史江がポツリと呟いた。
「いや、一つ思いついた。彼に勝てる方法を。もしかしたらだけどな」
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