6月 9日金曜日 校門 秘密交渉1
古城ミフユ
下校時間になるとみんなで一緒に校門を出た。ちょうど日没で西の空はほのかな朱のグラデーションを描いていた。
「みんな、例の人が出てくるのを待って話してみるから先に帰ってて。あと明日はみんな時間に遅れないように。服装はラフでいいからね。唯一必須事項はお腹すかせてくる事!」
秋山さんが「冬ちゃんだけ待つって何の事?」という顔をしていたけど、姫岡くんがすぐ耳打ちして教えてくれていた。お互いに手を振って別れると吉良さんたちにとは出会わないように物陰に隠れた。
5分ほどで目当ての大村先輩が校門から出てきたので物陰から離れた。
「大村先輩」
薄暗くなってきていたのでさすがに大村会長もちょっと驚いた風だった。
「おっと……古城さんか。おどかすなよ。ひょっとして恋の相談か?言っとくが俺はそういう相談も得意だが相談料は高い。匿名の3年生Aくんからは相談して恋が実を結んだけどもう別れたのはどちらもお前のアドバイスのせいだと言われた実績もある。用はなんだ?」
「そういう冗談を言う人だとは知りませんでした」
「実際に冗談だからな。誤解してないようで何よりだ」
あー。この人、普段は冗談が効きすぎる人だったとは知らなかったってそうじゃない、本題を言わなきゃ。
「折り入って恋愛相談じゃないお話があるんですがちょっと時間を頂けませんか?」
「ここじゃまずそうだな」
「はい。コーヒーお好きならいい店があります」
「近いならそこに行こうか」
「5分ぐらいですから」
私は大村先輩を案内して個人営業のカフェへ案内した。日向くんが見つけた店とは違いコーヒーオンリーで勝負している。この時間だと部活帰りの子はハンバーガーチェーン店やコンビニに流れるせいか、高校生がここに来る事はまずないから静かに話すには向いている。人によっては密談向きと言いそうなお店だ。
お店は白い内装に木目を生かしたシンプルな内装で椅子が置かれていないカウンターの中にはマスターがいた。長方形の店内壁側には木製の長椅子が作りこまれていてその前にテーブルとウッドチェアが6セットほど並んでいた。
客は私達以外いない。一番奥の席へ行き、大村先輩が長椅子側に座ると私は向かい側の椅子に座った。
「ふーん。古城、よく見つけたな」
「人に教えてもらっただけですから」
実のところコーヒー趣味のお母さんが保護者面談の時見つけていていたのだ。コーヒーでは人が変わるお母さんにして美味しかったと折り紙付。だから人に安心して勧められる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます