第33話 ショートピース

 先日、自分のバイト歴を振り返る出来事がありました。


 改まって、振り返ってみると、私、中学生の時から働いていましたねぇ。


 最初は中学2年生の時の時の新聞配達。


 朝刊の配達をしてました。


 近所に、新聞店があったのですが、バイトをしていた高校生が足を折ってしまって、『明日からお願い』ってピンチヒッターで頼まれました。


 まだ若くて、バイク乗れませんでしたから、自転車での配達でした。


 1人で1区間担当するのは荷が重く、友達と2人で半分こして……結局1年間、担当していましたねぇ。


 中学3年の時は、向かいのガソリンスタンド。


 給油は出来ないのですが、灰皿とゴミを預かって、良い匂いのツブツブを入れて、窓を拭く作業。


 これも、ガソリンスタンドのおじさんが、腰を痛めて、夏休みに頼まれたんですよね。


 想像より体力的にはキツイけど、楽しかった。


 なので、冬休みも頼まれた時は、気軽に了承しました。


 ですが、冬の窓拭きはツライ……


 ガソリンスタンドの仕事を甘く見ていた、と痛感しました。


 そして、高校生になり、ガソリンスタンドと同じオーナーさんが、その隣で営業しているコンビニへ。


 商店からコンビニになったタイプだったので、飲料水の品出しの時、冷えてる品物を一旦出して、奥にぬるくて新しい商品を入れ、また、冷えた商品を戻さなきゃいけないのが、手が冷えて大変だった記憶があります。


 勿論、レジも担当します。


 タバコの種類を覚えるのに一苦労でしたね。


 最初は正式名称で覚えるんですけど、お客様は短くして言いますから、毎回確認してました。


「マイルドセブン」を「マイセン」とか言われるので、大混乱でした。


 今は、「メビウス」になったかな?


 年号を覚えるように、必死に覚えていた様な気がします。


 今のタバコを番号で聞けるシステム、スゴく良いと思います。


 ところで、「ショートピース」って知ってますか?


 マッチ箱より、ちょっと大きい位の小箱に10本入ってるんです。


 他のタバコは、一箱に20本。


 確か、普通のタバコは一箱350円位。


「ショートピース」は二箱で300円位。


 ポイントは、『二箱で・・・』というところ。


 ココ、テストに出ます!




 毎週日曜日、競馬の帰りに寄るらしいお爺さんがいました。


 このお爺さん、すごいんですよ!


 腹巻してて、そこに札束挟んでるんです。


 そして、いつも、缶コーヒーと「ショートピース」を買っていくのです。


 たまに、オレンジジュースも買って、私にくれました。


「休憩時間に飲みな!」って。


 そんな、ちょいコワおもての、優しいお爺さんに、私はひどい事してたんですよ。


「ショートピース」を一箱で売ってたんです。


 二箱分の値段で……


 絶対、間違ってるの分かってたと思うんですけどねー。


 初心者だと思って、気づくまで待ってくれてたのかも。


 私が1人でレジに立つのは、4時前後の90分くらい。


 店の奥さんが、夕食の支度で抜けるんですよ。


 その間に、「ショートピース」を買っていくお客様は、そのお爺さんしか居なくて。


 その事実に気が付いたのは、バイトを辞めてからずっと後でした。


 あの時のお爺さん、ごめんなさい。

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