第21話 カバ

 子供からの質問には、真摯に答えなくてはいけません。


 何となく面白いから、とか、イタズラ心、とか、ましては忙しい、とかの理由でおざなりに答えてはいけません。


 決して。





 ある日、動物のドキュメンタリーで、「カバ」の群れが写ってました。


 子供のカバを大人のカバが囲むようにして移動する群れ。


 場合によっては、ワニよりも強いとか……


 スゴイ迫力……





 私は言いました。


「スゴイ!メスばっかりなのに!強い‼︎」


 その時、一緒にテレビを観ていた夫と弟が、


 夫「え?メスばっかりなの?」

 弟「は?何で?」


 私「?? 見たままでしょう?」


 弟「……あのさ。ドコでメスって判断してる?」


 私「えぇーっ!? だって。 ツノが無いじゃない! カバが雌で、サイが雄なんだよ! 知らなかったの?」


 夫「………… 」


 弟「出た…… 」


 私「えっ?ナニ??」


 弟「あのさ、ショックかもしれないけど、大事な事だから、よく聞いて!カバとサイは別々の生き物。夫婦じゃない」


 私「 」


 弟「ドコ情報?」


 私「またぁ。2人して嘘ついて〜。逆に、ドコ情報〜?」


 弟「……サイにも雌いるから。ホラ」


 ノートパソコンを立ち上げた弟が、“サイのメス”、“特徴”と検索した画面を指す。


 私「だって、昔、動物園に行ったら同じところに居た!」


 弟「それは、似たような環境で生息しているからでしょ?」


 私「でも! 今までずっとそう思って来たし、誰も違うって言わなかった! 皆んなそうだと思ってるよ! 」


 弟「いや。間違いが微妙過ぎて、誰もその思い違いに気が付かなかっただけだと思う」


 夫「そうかも。ちなみに俺の周りには、そう思っている人は居ないかな…… 」


 私「えー」





 後々、弟の調査により分かったのは、私が幼い頃、「カバが女で、サイが男なの?」と聞いた時に父がテキトーに「そうだよ」と言った事が原因でした。


 そのイタズラが微妙過ぎて、訂正される機会が無く、その当時30年近く生きてしまったのでした。




 危ない。危ない。


 この経験から、子供に知識系のイタズラはしない事にしています。

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