NO.10-22 夜野様 「俺の思ってた異世界と違う」

【募集テーマ】

 Thema:「旅」

 企画募集日:2019.10.11


【作品名】

「俺の思ってた異世界と違う」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054890982365


【作品概要】


 異世界に転生した「セト」の話。


【感想】

 企画者は、この作品を拝読して「また同じような異世界転生のお話に出会ったな」と最初は思いました。ついでに申し上げますと、企画者はこの作品が企画に参加されず、タイトルとキャッチフレーズだけで出会っていたとしたら絶対に読まなかったと思います。

 しかし、読んでみると確かに異世界転生のお話ですが、主人公のセトは転生しても全く恵まれない生活をしておりました。それまでの経緯はありがちといえばありがちな展開ですが、それでも作者様が他の異世界転生のお話とは別のものを書きたいという意思があるように思えます。

 他の作者様の感想で書いたかもしれませんが、企画者にとって異世界転移転生のお話と言うのは書く側にとっても読む側にとっても負担が少なくて済むという利点があるように思います。

 何故なら現代を舞台にした話にするのであれば、現代にあるものを利用して書けばいいですが、現代の常識をきちんと把握していなければ書けません。また異世界だけのファンタジーにしようとすれば、発想は自由でいいですが隅から隅まで設定を作者様自身で考えなければならず、読者がその異世界の設定が分かるように説明しなければなりません。

 しかし、異世界転移転生物語というのは、その二つのいい所を取り出していると言えます。現代の常識を使うことができますし、それがあるので異世界の説明も読者にしやすいと言えるでしょう。しかし、それ故にその題材を用いた作品は山ほどあるため、逆にその作者様らしいものを書くのは難しいと企画者は思います。

 さて、前置きが長くなりましたが、感想を述べていこうと思います。


 まず、文章の方ですが、読んでいて引っかかるような点はあまりなかったので読みやすいと思いました。場所に関すること、風景、状況、登場人物たちの姿などは情報量からすると、少なめであるように感じますが、ライトノベルとして読むのであれば許容範囲であると思います。

 また、最初にも申し上げました通り、主人公が転生したら成功するような話ではないところは好感が持てますし、セトの考え方も面白いと思います。

 一つ挙げるなら、「前世の記憶」のことです。セトは転生する前に、神様に「前世の記憶」を持ったまま転生したいと言いました。しかし、それを持って転生してしまったが故に、「誰かの為に人生を歩んでいるように思える」と言っている所が、(企画者にとって)今までになかった発想だと思いました。確かに、前世の記憶があるというキャラクターたちは、企画者も今まで読んできた物語で出会ってきましたが、その記憶が重要な役割を担っている場合がほとんどです。しかし、セトの場合はそうではありません。寧ろ自分の人生を歩むのに邪魔なものになっている、という感じです。とはいえ、セトは前世の記憶の良かったことなどは捨てきれずに時折思い出しているようですし、後半を読んでいくと前世の記憶に引っ張られて行っているのが企画者的には少々残念でした。


 全体として、作者様はこの作品を上手くまとめていらっしゃると思いました。しかし、一つ気になる点がありましたので、それについて述べさせていただきます。

 それは、「テンポがいい=お話が淡々と進んでしまっている」というところです。この作品は確かに読みやすいです。しかし、この作品の中で語られるべきものすらも、時々削がれてしまっているように思います。それ故にこの作品をよく理解しようとする人が読んだ場合物足りなさを感じるような気がします。勿論、何でもかんでも説明しなければいけないということではありませんから、作者様がこの作品の良さの一つがそこにあるというのであれば、それで良いのだと思います。

 

 最後に、この作品は雰囲気が柔らかく、誰にでも開かれたお話だと思います。

 セトもレグナもいい子で、ただ、優しいとか、善意があるとかそういうことではなく、自身が困難にあればそれ相応の良いことを彼らの生きる中で見つけようとしています。また、何か天秤にかけなければいけないことがあれば、その後に読者が「よかったな」と思える選択肢をしてくれているため、読者は前向きな気持ちになれると思います。


以上。

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